「アメリカだけに頼れない」韓国で広がる核武装論、日韓同時の核武装を訴える書籍が日本でも出版
一方で、韓国の尹錫悦大統領をはじめ現政権には核武装という考えは希薄であり、アメリカとの同盟関係を中心に、日本とも協力しながら抑止力を強化する方針を採っている。 2023年4月の米韓首脳会談で発表された「ワシントン宣言」のように、核兵器搭載可能な原子力潜水艦の韓国への寄港などをはじめとする「核の傘」の強化こそ、北朝鮮への抑止力になるとの考えを崩していない。 そんな韓国政府の方針に、鄭氏は疑問を呈する。韓国側が通常兵器で北朝鮮の核兵器に対応しようとすれば、莫大な国防費が必要だとし、そうしても核兵器に効果的に対応できるのだろうか、と。
また、アメリカの拡大抑止は、北朝鮮が非核国家でICBM(大陸間弾道ミサイル)を保有していなければ信頼に足るやり方だが、現在の北朝鮮はそのレベルよりはるかに上を行っているのは確かだ。 韓国は日本同様、NPT(核不拡散条約)加盟国であり、その状態で核武装を宣言すれば世界からの制裁が待ち受けている。韓国が平和目的以外の核開発を行うとなれば、当然、世界各国から各種経済制裁を受けることが予想される。 ■経済制裁あっても核武装が有利
しかし、これにも鄭氏は反論する。日本同様に世界経済に占める経済力が強い韓国を、アメリカなどはそう簡単に制裁できるだろうか、というのだ。 例えば、1990年代後半にインドが5回にわたって核実験を行った後にアメリカを中心に制裁が実行されたが、徐々に制裁は緩和され、2001年9月には完全に廃止されている例を挙げる。 また現在、アメリカと中国が戦略的対立を深め、経済安保が重視されるようになった。その核心的な技術・産業は半導体分野であり、これにはアメリカも韓国企業の力を借りなければならない。となれば、アメリカが韓国経済を破綻させるような制裁を行うことは現実性がないと指摘する。
その点でも同盟関係を持ち出すアメリカが、韓国経済の弱体化をしようとは考えられない。しかも、弱体化する韓国を歓迎する国は、まさしく北朝鮮だと付け加える。 鄭氏は日本での出版にあたり、日本も核保有を真剣に考慮すべきだと提案する。日本は世界唯一の戦争被爆国であり、核兵器など核に対する強い拒否感を持っていることは理解できるとしながらも、次のような情勢判断ゆえに、日本の独自核武装が必要なのではないかと訴える。