「アメリカだけに頼れない」韓国で広がる核武装論、日韓同時の核武装を訴える書籍が日本でも出版
これには、次のような主張が韓国にある、と紹介する。 〈核を持った北朝鮮が朝鮮半島の共産化を行うだろうという主張は以前にもあり、今後も継続して出てくるだろう。このような主張の論理構造は(…)第1段階で北朝鮮は破壊力が低い戦術核兵器を動員して韓国に奇襲攻撃を仕掛けたり圧迫する。第2段階として、北朝鮮が戦略核兵器であるICBMで米国の大都市を攻撃すると脅し、米国の介入を遮断する。第3段階は、北朝鮮が韓国軍と在韓米軍の主要基地に攻撃を加え、韓米連合戦力を無力化し、特殊部隊を投入して韓国の主要施設を掌握する。最後に北朝鮮が地上軍を投入して朝鮮半島の武力統一を完成させる。〉(120ページ)
この主張のように、アメリカの介入が北朝鮮が狙うICBMに遮断され、韓国を守らないのではないかと恐れる人が韓国では少なくはないということだが、鄭旭湜氏はこのようなシナリオには「致命的な欠陥がある」と指摘する。それは、米韓同盟は北朝鮮の核の脅しには強力な報復能力とそれを使う意思を必ず示す、というものだ。 米韓同盟は北朝鮮に対し十分な報復能力を保有しており、その使用を何回も北朝鮮に表明してきている。したがって、前出のシナリオの第1段階はすでに破綻しているという。
また、第2段階の内容にも反論を行っている。すなわちアメリカは約4万の核兵器を保有していたソ連を相手にしながらも、同盟国を保護する核の傘を広げてきた。当時のロシアや中国と比べても弱小国である北朝鮮の脅威に対して、同盟国である韓国の防衛を放棄することは杞憂なのだと。 さらに韓国には在韓米軍を含めて10万人超のアメリカ人が居住しており、北朝鮮がアメリカ本土に向かって核の脅威を向けてくれば、使用可能なすべての手段を動員して報復すると警告するのは確実だと鄭旭湜氏は断言する。
鄭旭湜氏は逆に、「アメリカの圧倒的な報復という脅威を前にした北朝鮮はどのような選択をするだろうかを考えてみたほうがいい」と言う。それは、アメリカが報復できないという一抹の希望にすがって自身の核兵器を使用するかどうか。 それは「10発の拳銃に9発を残して行うロシアンルーレットと同じ」ことだと一笑に付す。北朝鮮の指導者はそこまで愚かではない、ということだ。 ■日本以上の軍事力を持つ韓国 さらに、決定的な理由があると、鄭旭湜氏は紹介する。アメリカは世界戦略の中心に同盟を置き、その同盟は信頼に基づいている。となれば、アメリカが北朝鮮の脅威に屈服したとなれば、その信頼が根底から崩れることを意味している、と解説する。