ロシア軍がヘルソン市でドローンによる「人間狩り」 国際法違反の蛮行
小型のドローン(無人機)は戦闘に新たなレベルの精密さをもたらした。ほかの兵器と異なり、ドローンでは攻撃前に目標をクローズアップして見ることができるため、操縦士はそれが正当な目標かどうか確認する機会をもてる。米軍がアフガニスタンで、交戦規則によってロケット砲や大砲が使えないような状況でもスイッチブレード300自爆ドローンなら投入できたのも、最後の瞬間に攻撃を「ウェイブ・オフ(中止)」できるからだった。 ドローンは本来、もっぱら軍事目標のみが攻撃されて民間人の犠牲を完全に回避できる「区別された交戦(discriminate warfare)」という新時代を可能にするはずだ。だが、ウクライナ南部ヘルソン市では、ロシア軍がドローンを使って故意に民間人を攻撃し、その動画を誇らしげにソーシャルメディアに投稿している。バス停で待っている人や通勤・帰宅途中の人、さらには公園で遊んでいる子どもまでもが攻撃され、その様子や結果がオンラインで共有されて称賛されている。 ウクライナメディアのキーウ・インディペンデントによると、ロシア軍によるこの意図的なテロ作戦は地元住民から「ヒューマン・サファリ(人間狩り)」と呼ばれている。 ■1日100回のドローン攻撃 2022年2月にロシアがウクライナに対する全面戦争を引き起こして以来、港湾都市のヘルソンは最前線となってきた。戦争初期にロシア軍に占領されたが、2022年11月にウクライナ軍によって解放され、ロシア軍はドニプロ川の対岸へ押し戻された。 現在、ロシア軍の攻撃からこの都市を隔てているのはドニプロ川だけだ。こうした状況では、昔なら大砲やロケット砲から砲弾が無作為に撃ち込まれていただろうが、21世紀のいまはドローンが好まれる兵器になっている。ウクライナメディアのキーウ・ポストによれば、今年7~8月にヘルソン州で報告された死傷者の半分近くはドローンによる攻撃の被害者で、ロシア軍による1日のドローン攻撃数は平均およそ100回に達した。 ロシア軍が用いているドローンには、擲弾(てきだん)を投下するクワッドコプター(4翼機)、上空から威嚇するように目標を探し回る偵察機、突っ込んで自爆するFPV(一人称視点)ドローンの3種類がある。自爆FPVドローンが使われるケースは少なく、繰り返し使用できる擲弾爆撃機タイプが最も多用されているもようだ。