プロレスラー大和ヒロシ、コロナ禍の生き方 鍵は臨機応変
試合は配信マッチが主流に 控室に大きな変化
大和はコロナ以前から広い視野を持ち活動してきた。プロフィールに“白い吟遊格闘海苔商人”とあるように海苔の販売も営んでいるが、それもプロレスありきなのだとか。 「中小企業家同友会で学んだ『三方よし』という経営理念があって『売り手によし』『買い手によし』『世間によし』、お店とお客さんだけがWin-Winになるだけじゃなくその商売が地域にも貢献できる、それがいい仕事だと。その経営理念をグッズに反映できないかと考え、自分の故郷の特産品である海苔をグッズにすることを思い付いたのです。ただあくまでグッズなので、プロレスをやらないことには知っていただく機会もなく難しい。ネット販売も大きな売上にはなっていないのが現状です」 コロナ禍となり、試合もネットで配信するいわゆる“配信マッチ”が主流という。 「配信の場合、配信の強い媒体を持っている団体じゃないとなかなかやっていけません。YouTubeやライブ配信アプリで配信マッチ自体はできても、それだけでいろいろな経費をまかなえるかというと難しいですから」
現場レベルの話でいえば控室の状況が大きく変化したという。 「まずマスクは必ず着用です。選手の中にもし感染者がいた場合の、自分が感染しないように備えているというのはもちろん、ソーシャルディスタンスをはじめ控室の環境を整えたうえでマスクを着けていれば、感染者と直接試合をしない限りは濃厚接触者と認定されにくいからです。実は、1度目の緊急事態宣言が明けてやっと試合ができるようになった昨年の夏頃に選手からコロナの感染者が出て、濃厚接触の定義がまだ曖昧で控室にいた選手全員が濃厚接触者として認定されてしまったんです。そのため全員が2週間自宅待機となり、宣言が明けたばかりでまた仕事がなくなったということを経験しています。そんな苦境を味わっているので対策を徹底しているわけです」
何もしなければ先細りに 生きるために考え動く
生活を守るためにアルバイトもしてきたが、それで気づいたことがあるという。 「不安だからかといって何もしなければ先細りするだけ。細々と生きていける状況でもなくてこのままでは枯れていくしかない。そこで前向きに考え、屋外だし密になりにくいと遺跡発掘をしたりしました。でも、それではやはりそこで完結してしまう。多少リスクをとっても先につながることをやらないとだめだな、と。収入を確保しなければいけないという事情もありつつ、たとえプロレス以外のことであっても将来プロレスラーとして生き続けるためにプラスになることは何か。すごく難しいところなのですがそこを考え動き始めています」 お金についても考え方が変わったそうだ。 「今後はお金を借りることも前向きに考えていかないとな、と。借金は数学的に考えれば0よりマイナスなわけですが、経済的に考えれば0は本当に何もない状態なのに対しマイナスはある意味ではお金がある状態とも言えると思ったんです。手元に現金があるので、それを元手に何かができるのでまだ先があるという発想です。借金をしてでも資金をつくって家族のために先を見据えていかないといけない、という考えになりました。それから、法人化も視野に入れて動かなければなと思っているところです。個人事業主よりも圧倒的に法人のほうが信用面でも上ですし、可能性も増えます。かなりいろいろな面で意識の改革をしていかなくてはいけないなと」