ドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』で描かれた性加害。被害者が声を上げても、声を封じられる現実が
◆佐倉の味方になり切れない 土方からの被害を公にしようとした佐倉に対し、恵は「こういうのは証拠がないと、ただ告発するだけじゃかえって佐倉さんの立場が悪くなるだけだと思うんです」と小川の発言に流され、佐倉の味方になり切れない。佐倉は「ごめん、面倒なことに巻き込もうとして」と言って去ってしまう。 そして、「所内でのハラスメント行為に関する通報」と題して、佐倉は一斉送信で、土方からセクハラを受けていること、他の非正規職員も被害に遭っている可能性があるため、至急調査してほしいという内容を送ったのだった。 恵が佐倉に話しかけようとしたところ、他の社員たちは恵だけに声をかけ、ランチに誘い、連れ出した。そこで社員たちから、次々とセカンドレイプ発言が飛び出すのだ。 「土方さんがセクハラするなんて考えられない」 「アレだったらどうする? 逆恨み。フラれたはらいせとか」 「あんなメール出して、涼しい顔で出勤してくるなんて、メンタル鋼だよね」 「確かに、普通は針のむしろだと思うけどね」 土方にあらぬ疑いをかけ、騒ぎ立てた張本人とされた佐倉は職場を去ることになる。そして、土方のターゲットが恵に移るのだ。 土方は、ひとりでいる恵にこう話しかける。「佐倉さんのこと、残念だったね。町田さんは次の更新も大丈夫だと思うよ。僕が高く買ってますから。せっかくだから近々親睦会でもしようか」。肩を触られた恵は、精神的に追い詰められていく。
◆おかしいことはおかしいって言いたい 恵は、やっと佐倉が受けたハラスメントの被害の深刻さを実感し、佐倉に謝罪する。 「あの時、佐倉さんの力になれなかったこと、すごく後悔してます。もう遅いかもしれないんですけど、私も声を上げたいと思っています。」 「そんなことしたら、町田さんまで仕事を失うことになるかもしれないよ」 「それってすごく理不尽ですけど、でも、それでもおかしいことはおかしいって言いたいんです。私も、土方からずっとハラスメントを受けていました。気持ち悪いメッセージしょっちゅう来てたのに、自分は大丈夫だって思おうとしてたんです。これがハラスメントだって認めてしまったら、自分が被害者みたいな、弱い存在みたいな、そういう惨めな気持ちになるのが嫌で。一緒に戦いましょう」 被害を被害と認めてしまったら、自分の精神がしんどくなる。だから、受けたことをすぐに被害だと受け入れられない、という人も多いのではないだろうか。 恵は、土方だけを追求しても、根本的な解決にならないということに気づく。恵や佐倉に起こった問題は、非正規公務員が置かれる立場の問題であり、「評価基準がはっきりしてないなかで雇い止めできてしまう今の制度が産む問題」として、問題解決に向け署名運動を立ち上げる。 恵も結果的に職場を去ることになったが、その後職場では他の非正規職員たちが声をあげ、土方のハラスメントの証拠を提出。土方は懲戒処分に追い込まれた。