ドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』で描かれた性加害。被害者が声を上げても、声を封じられる現実が
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。第81回は「性加害が描かれたドラマ」です。 * * * * * * * ◆職場での立場を利用した性加害 先日最終回を迎えたドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』では、職場での立場を利用した性加害が描かれた。 主人公の姉・町田恵(仁村紗和)は、ハローワークで非正規職員として働いている。同じ職場で働く土方昭彦(阪田マサノブ)から、頻繁にメールが届くようになる。このメールの文面がなんともリアル。いわゆる「おじさん構文」で、妙に馴れ馴れしく、下心が透けて見える文面なのだ。ドラマでこんなに生々しい文面を見るのは初めてかも知れない。 恵だけでなく、恵とよく昼食を共にする、同じく非正規職員の佐倉治子(酒井若菜)も、土方から同様のメールを受け取っていた。 ふたりは居心地の悪さや怖さを感じるものの、土方は正規職員で立場があり、印象を悪くすればふたりの更新に響く。そのため、ふたりは受け流すことしかできない。 恵は、同じ職場で正規職員として働く彼氏の小川大河(渡辺大知)に、意を決して土方から頻繁に送られてくるメールのことを打ち明ける。 「いつもメッセージ来るんだけど、内容がなんていうか、ちょっとセクハラっぽいっていうか、顔文字とか絵文字とかすごくて」 彼女にそんなことが起きていたら、彼氏として心配するのが当然と思うが、小川はこう言い放つのだ。 「大袈裟だよ。土方さんも、気使って若い人に合わせようとしてんじゃないの。土方さんだよ? ハラスメントから一番遠い人でしょ。顔文字使っただけでセクハラとか言われたんじゃ可哀想だって。」
◆「あの人がそんなことするはずない」 土方は外面がよく、人望もある。周囲に、まさかあの人に限ってそんなこと、と思われるような人なのだ。でも、性加害において、加害者が「あの人がそんなことするはずない」という印象を周囲から抱かれていることはよくあることだ。 そしてある日、恵は小川と一緒にいる時に、土方と佐倉が一緒にタクシーに乗るところを目撃する。恵は心配するが、小川は見間違いだ、と取り合わない。 しかし後日、佐倉は土方に親睦会と称して個室の居酒屋に連れていかれ、抱きつかれるなどの被害に遭っていたことが発覚する。 恵は小川に相談するが、小川は「嫌なら逃げれば良かったんじゃないの?」と事態を軽くとらえている。さらに、「証拠は? そういうの、証拠がないとどうにも出来ないよ。こう言っちゃ悪いけど、佐倉さんだってもう40過ぎだし、わざわざ土方さんがセクハラなんかするかなぁ。誤解しないでよ。佐倉さんが言ってることが嘘とかそういうことを言ってるんじゃなくて、恵は佐倉さんの話しか聞いてないから、佐倉さんが被害者に見えるかも知れないけどさ、土方さんは人望もあるし、変にオオゴトにしたら、佐倉さんの立場が悪くなるだけじゃない? 恵だって安易に首突っ込んだら働きにくくなるんだよ。俺は、恵を守るためにも言ってるんだから。」 小川は佐倉が嘘をついているとは思わない、恵の立場を悪くしないため、一方の話しか聞いていないから判断できない、などと中立的な立場を装いながらも、40を過ぎた人にセクハラするのか? 土方にも人望がある、など土方の肩を持つような発言をし、恵がこの件に立ち入らないように牽制しているのがなんともたちが悪い。