「頭が働いていない」と感じたら<環境>のせいかも…騒音、温度、におい。とりあえず机の上は片付いているに越したことはない
「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「メタ」とは「高次の」という意味で、つまり認知(記憶、学習、思考など)を、高い視点からさらに認知することを指します。三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授によれば「メタ認知は自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる<もうひとりの自分>。活用次第で頭の使い方がグッとよくなる」だそう。先生の著書『メタ認知』をもとにした本連載で、あなたの脳のパフォーマンスを最大限に発揮させる方法を伝授します! 【書影】三宮先生が「頭」をよりよくする方法を伝授!『メタ認知』 * * * * * * * ◆学習に不向きな環境には案外気づかない 私たちは、たとえ学習に不向きな環境であっても、慣れてしまえば、認知活動への負の影響をあまり感じなくなります。 たとえば、いつも騒がしい場所で勉強していると、それが当たり前になってしまい、騒がしさゆえに頭の働きが妨げられていることに気づきにくくなります。 このように、主観的には環境の負の影響を感じなくとも、実際には認知活動への妨害効果が生じている場合が多々あります。 ある研究では、ニュースの内容を覚えておいて後で問題に答えるというテストの成績が、空調音や会話音といった騒音によって下がることが示されました。しかも、同じ騒音であっても、人が会話をしている音声の方が単純な空調音よりも妨げになりやすく、よりいっそうテスト成績が下がることがわかりました*1。
◆根性を頼みに無理やり認知作業を続けても成果は望めない さらに、学習に及ぼす空気環境や温度・湿度などの環境の影響を調べた研究もあります。 建築分野の授業での学習において、学習者の主観評価(空気環境が授業の理解度を低下させるかなど)と理解テストによる客観評価から、空気の汚れやよどみ、におい、ほこりっぽさといった空気環境の悪さ、そして不快な温度・湿度などが、主観評価にも客観評価にも悪影響を及ぼすことがわかりました*2。 温度や湿度と言えば、蒸し暑い日本の夏は、空調を使わない限り、頭がよく働かないことを多くの人が経験しているのではないでしょうか。 暑さで体温が上昇すると、体内の熱を外に逃がすために皮膚の血管が拡張し、汗をかきます。すると、血液の水分量が減り、血圧が下がって脳に送り込む血液量が減少してしまいます。その結果、頭がぼんやりして働きが悪くなるのです。 こうした場合、我慢は禁物です。根性を頼みとして無理やり認知作業を続けても、成果は望めないでしょう。