ヨッピーさん「育児ハック」インタビュー 「子どもが社会的“野生味”を身につけてくれれば」
ネットで「子持ち様」と言われても...
――「社会全体で子どもを育てる」環境になるべきだと思いますが、一方でSNSなどでは子育てについて発信しづらい雰囲気も感じます。 僕も「育児の発信してくれてありがたい」って言ってくれる人の方がもちろん多いんですけど、「イクメン気取りするな」ってすごく言われます。 「ヨッピーは体力があって、自営業という立場を忘れて偉そうなことを言ってる」とか。 「子ども=贅沢品」みたいな言われ方もし始めているので、子どもに関する投稿を自慢みたいに捉える人もいるので気を遣いますね。 ――悩みや不安ばかりを書いて育児のネガティブな印象ばかりが広まってしまうのも良くないですし、子育てにポジティブな発信をしたら、それはそれで自慢と捉えられてしまう......。 そもそも育児は悩んでる人が多いジャンルなんですよね。だから能天気に「楽しい」って言われたら、腹立つ気持ちもわかるんです。「お前の子どもは運よく健常者だっただけ」と言われますし……。 うちの子どもも、実はアトピー体質で毎日ケアがちょっと大変だったりするんですが、そういう細かいところまでいちいち発信しないじゃないですか。他人から見えている部分は優雅でも、本人たちは水面下で必死にバタ足していたりする。子育ては楽しそうに見えても、当然それなりに大変なことがいっぱいあります。 ただ、ネットでは「子持ち様」という言葉で叩くのを目にしますけど、いざ子どもを連れて外に出ると、すれ違う知らない人に「かわいいですね」と声をかけてもらったり、道を譲ってもらったりすることも多いので、実際はみんな優しいですよ。
これからの時代を生き抜く「野生味」を
――これからどんな風に子育てしていきたいですか。 自分が40数年生きてきた中で、 周りに幸せそうに思える人たちがたくさんいて、その人たちの共通項ってなんだろうなって思ったら「野生味」のある人なんですよね。 体力があって、何をしていても楽しそうで、どこにでも首を突っ込んでいく。 そういう人は何か困ったことがあっても大丈夫そうなんです。その状況すら楽しんでいるように見える。 そういうマインドを身につけるには、やっぱり基礎的な体力は必要です。あとはいろんな経験をして、道が一本道じゃないこと、レールから外れる生き方もあるということを、子どもに知ってほしいですね。子どもなんて親の思い通りにはならないんですけど、経験がプラスに変えてくれることは絶対あると思ってます。 ――「社会的野生味」と書かれていましたね。習い事や受験など、親が先回りして情報収集して、子どもの野生味の可能性を奪うことにならないか悩ましいです。 友達の子どもがいわゆる「お受験塾」に通ったんですけど、「お父様、お母様と呼びましょう」とか「朝食は必ず家族揃って食べたことにしましょう」、「母親は専業主婦じゃないと受からない」と言われるんですって。 そういう教育方針で子育てしていくことが、めっちゃ怖いなと思うんですよね。型にはめようとしているみたいで。友達は結局その価値観に合わなくて、自由な校風の学校に通うために長野に引っ越したみたいですが。僕も、このまま東京で子どもを育てることにちょっと悩んでいるんです。 もしも受験に失敗したとしても死ぬわけじゃないし、不幸になるって確定したわけでもない。大学を出ていなくても、楽しそうに生きている人たちが僕の周りにはたくさんいるし、中卒で上場企業の社長になってる人もいますから。 子どもたちが大人になる頃、日本にはもっといろんな国の人たちがいて、海外で働く日本人も増えていく。多文化共生の時代になったとき、ワクワクできて楽しく生き抜く。そんな力をつけさせてあげたいなと思います。 <ヨッピーさんプロフィール> 1980年生まれ。ライターとして様々な媒体で記事を執筆している。ライター以外にも、お出かけメディアの編集長や、講演、イベント主催などを行なう。子育てをしている親にゆっくりお風呂に入ってもらいたいという思いから託児銭湯も主催。 (文・川崎絵美 編集・笹川ねこ)
朝日新聞社(好書好日)