「東京ラブストーリー」が生まれた頃 時代反映するテレビドラマ
新旧作品を見比べるのも一興か
そしてそんな時代、放送局も今では考えられないほど潤っていたという。当時地上波放送局でプロデューサーを務め現在は制作会社を経営する60代男性は話す。 「何しろスポンサーが次々とつきましたから放送局も莫大な収入に恵まれていました。ドラマ、バラエティー、報道、どんな番組にも制作費がふんだんに投入されていましたよ。僕自身の給料もどんどん上がって行って車もマンションも購入できました。とにかく頑張れば上昇し続けられる雰囲気でしたね。その後の苦労を考えると本当に懐かしい時代ですが、甘い汁を吸うことに慣れ切ってしまって抜け出せない人たちはどんどん脱落していきましたよ。僕自身も“ギョーカイ人”として勘違いしていました。趣味のサークルである日、リーダーさんから『悪いが次回から出席しないでくれ』と言われたんです。びっくりしましたが、いつの間にか思い上がって態度が横柄な嫌なやつになっていたんですね」 ドラマは時代の合わせ鏡でもある。そこにはその時代の空気が反映される。「東京ラブストーリー」はとりたてて贅沢な暮らしぶりを描いているわけではない。むしろ純朴で不器用な恋愛模様を描いているのだが、それでも画面からはそこはかとなく“キラキラ感”あふれるライフスタイルや時代の雰囲気が伝わってくる。とくに同作はトレンディドラマブームの火付け役でもあり、ヒロイン・リカのようなOLたちに熱く支持され、毎週月曜夜はドラマを見ようと帰宅を急ぎ繁華街が閑散とするようだったとも言われている。 「当時はカード式の公衆電話や固定電話の時代で今日のように携帯電話やメールでいつでも連絡が取れるわけではなかったんですよね。だからこそ恋愛ドラマでも待ち合わせとか連絡がうまく行かないことによるすれ違いを表現しやすかったんだと思います。でも今はデジタル化でテクノロジーが飛躍的に進歩してスマホで簡単に連絡が取れる時代です。すれ違いの描き方一つとっても工夫が必要というかドラマのテイストも時代によって変わってくるんですよね。『東京ラブストーリー』のように相当な年数を経てリメイクされた作品の場合、そういう時代性によるディテールを見るのも楽しみの一つではないでしょうか」(テレビ情報メディア・50代女性編集者) 恋愛の本質は変わらないが表現方法は時代によって変化してきたということなのだろう。現代版の「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)は10月12日深夜から毎週火曜に地上波放送されるという(関東ローカル)。また91年版についても毎週1話ずつ、現代版の地上波放送後からFOD、TVer、GYAO!で無料配信されるというから見比べてみるのも一興だ。 (写真と文・志和浩司)