2025年の「AI」はこうなる さらに進化するAI世界の展望 長谷佳明
24年12月、シリコンバレーのスタートアップWorld Labsは、画像を元に、三次元空間を生成し、その空間を歩き回ることができるコンテンツ動画のデモンストレーションを行った。World Labsは、スタンフォード大学のAI研究者であるフェイフェイ・リー教授などが24年に設立したスタートアップで、著名なベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツが投資するなど、注目されている。発展途上の技術ながら、二次元の平面から、 三次元のデータが生まれ、そこに自然界の法則が備わるインパクトはすさまじく、コンテンツの作成や楽しみ方に革命をもたらす可能性がある。 ◇一般のITエンジニアが活用できるレベルに オープンAIのChatGPTのような対話型AIサービスを利用する場合、大規模言語モデルなどのモデル自体には、基本的に「記憶(メモリー)」に相当するものはない。推論結果はその都度失われ、次の推論時に出力結果を再度入力するなど、記憶の仕組みを“外側”に設けなければならない。近年企業で導入が進んでいる、関連する情報を外部データベースから取り出し、推論に活用する「検索拡張生成(Retrieval-Augmented Generation、RAG)」も、モデルの外側に記憶のシステムを作るもので、生成AIを有効活用するための技術が急速に広まっている。 2025年には、これら技術の標準化が進み、ITエンジニアが普通に使えるような領域のシステムになるのではと思われる。たとえば、アンソロピックは、24年11月に「Claude Model Context Protocol(MCP)」を公開した。AIモデルと外部データベースとのやり取りをプロトコル(規約や手順)として整理し、効率的にやり取りできる。同様の技術は、24年12月に史上最高の100億ドルの資金調達で話題になった米国のデータブリックスが「Mosaic AIエージェントフレームワーク」としてリリースするなど、モデルを開発する企業や、AIの基盤技術に強みを持つ企業で相次いでいる。