【MLB】 成功の鍵は「4シームを投げないこと」 レッドソックス投手陣の躍進の要因とは?
球速・縦変化量を兼ね備えていない4シームは打たれやすい
球速・縦変化量を兼ね備える4シームが、他の質の4シームと比べていかに有効かは数字にも現れている。実際に球速92マイル(約148キロ)かつ重力を除いた縦変化量(IVB)が15インチ(約38センチ)以上ある4シームは、被打率は.237に過ぎず、さらに球種ごとの得点期待値の増減を示す"ランバリュー"は+612(100球あたり+0.3)をマークしている。 それに対し、球速はあるが縦変化量を欠くタイプは被打率.271・ランバリューは-414(100球あたり-0.4)。縦変化量はあるが球速を欠くタイプは被打率.285・ランバリューは-219(100球あたり-0.6)、縦変化量も球速も欠くタイプは被打率.298・ランバリューは-227(100球あたり-0.9)と苦戦を強いられている。 今年のレッドソックスは、縦変化量(IVB)が11インチ(約27.9センチ)の4シームをわずか3球しか投げていない(昨年は868球)。そして球速92マイル・縦変化量(IVB)15インチ以下の4シームは、今年わずか5球しか投じられていない(昨年は267球)。この大胆な施策は機能しており、レッドソックス投手陣の4シームは被打率.199・OPS.610に数字を改善させ、MLB18位から6位への飛躍を遂げた。 質の悪い4シームを淘汰するという戦略には、敏腕と名高いアンドリュー・ベイリー投手コーチが就任した影響があると言われている。質の悪い4シームを捨てて成績を好転させた投手はこれまでもいるが、球団単位でここまで徹底的に取り組んでいるのは、今年のレッドソックスくらいだろう。ベイリー投手コーチとレッドソックスの投手陣は、これまでの「4シームが投球の基本」というセオリーを覆してしまうかもしれない。