【妊活の本音】不妊治療の病院の選び方、パートナーとの関係など男女の悩みに専門家が回答!
現在妊活中、もしくは妊活経験のある30代~40代の男女の抱えるそれぞれのモヤモヤに対して、不妊治療や性、カップルを専門とする臨床心理士の戸田さやかさんにお答えいただきました。 【画像】妊娠、出産、不妊治療の現在についてチェック!
不妊治療のモヤモヤに生殖心理カウンセラーが回答
■不妊治療の病院には、どんな種類がある? ――皆さんのお話を聞いてみて、ファーストステップは「病院選び」だと感じました。皆さんはどのような基準で病院を決めているのでしょうか? M子さん(30代中盤 妊活歴2年、不妊治療歴1カ月) 私は上司が通っていた病院を教えてもらって、そこに通い始めました。身近で成果が出ているのを見て、心強いなと思ったのですが、そもそも不妊治療の病院にどんな種類があるのか、よくわかっていないかもしれません。 戸田さん 妊活の場合は、不妊治療専用クリニック、一般婦人科、それから大学病院の中の不妊の診療科、あるいは婦人科ですね。心臓疾患やがんなど他に疾患や持病があってすでに大学病院を受診している場合は、投薬や経過観察で診療科同士の連携が可能なので、同じ大学病院の中の不妊の診療科を選択するのもひとつです。投薬や経過など横の連携が必要な場合です。まずブライダルチェックだけでもしてみたいという方は、一般婦人科でブライダルチェックのメニューがあるところに行ってみるのもいいと思います。チェックだけでなく、すぐに不妊治療や医師の関わるタイミング法に進みたいということであれば、体外受精までやっている不妊治療専門クリニックがいいですね。 お詳しい方は、「この項目の検査を受けたい」と指定をして病院にお願いすればよいと思うのですが、何を受けたらいいかわからないという場合は、まずは最小限のブライダルチェックを受けていただくのが安心でしょう。あとは、今セックスレスに悩んでいるカップルも少なくないと思いますが、「セックスもしていない自分たちに子どもを授かる権利がない」なんて考えないで欲しいですね。セックスレスも不妊のひとつ。堂々と、不妊治療のクリニックに行っていいんですよ。 ■病院を変える、ベストなタイミングは? S太郎さん(40代 妊活歴2年、不妊治療歴2年) 女性は通院回数も多くなるから、先生との相性は重要ですよね。うちは今通っている病院で二つ目。最初に通った病院は、なんだか業務的で流れ作業のような印象を受けました。だから彼女が転院したい、と言ったときにはすぐに「そうしよう」と。今通っているところは先生も同世代で、親身になって話を聞いてくれて良いところですのですが、転院のベストなタイミングってあるのでしょうか。 戸田さん 病院を変えるタイミングは、いつでもいいんです。同じ治療を続けて授からないと気持ちも落ち込みますし、流産などの悲しい経験をしてしまった場合は、同じ場所に通い続けることでつらかった経験を思い出してしまう、などの心理的負担もあるでしょう。気分を変えるために転院するのもアリなので、気軽に変えていただいていいと思います。妊活をしている方にとって、“いい病院”は、”授かった病院”なんですよ。先生やスタッフの人柄、サービス体制、治療に対する姿勢など、病院によってさまざまですから、そのときの自分に合ったところに行ってみると良いと思います。「合わない」と思いながら我慢して通い続けるよりは、自分で様々な病院を見て選んで通いましょう。人工受精、体外受精に関しては説明会を行っているところがほとんどなので、まずは説明会に行ってみるのもいいですね。 E美さん(30代後半 妊活歴2年、不妊治療歴1年) 病院を変えてしまうと、それまで続けてきた治療履歴が水の泡になってしまいませんか?ある程度、治療を続けていると同じ先生に見続けてもらったほうが精度が上がるんじゃないかと思う節もあって…。 戸田さん 不妊治療に関しては、他の積み上げ式の治療と違って、生理がくればリセットされると考えるのが一般的です。また病院を変えるときに、「医療情報を引き継いでほしい」と依頼すればこれまでの情報を渡してもらえるので、そう伝えてみるのも手だと思いますよ。あとは、検査結果はきちんととっておいて新しい通院先へ持っていきましょう。また同じ検査をするのにお金がかかってしまいますから。 ■不妊治療の始めどき、終わらせどきとは 戸田さん 妊活を始めるときにまずは「どうして子どもが欲しいのか」ぜひパートナーと話し合ってほしいんです。その話し合いによって、どれくらいの熱意なのか、どれくらいのスピード感や予算でやるのか、子どもが欲しい理由によって変わることもあるので、その話し合いによって方向性が定められると思います。 それから、まずは情報を一緒に集めましょう。どこまでやるか、やらないかを決めるためにも情報が大切です。二人とも「積極的にやりたい」と思っていれば、 より効率的に進めるために情報を取りますが、意見や温度感に違いがありそうな場合は、自分たちの意思決定の幅を広げるために情報を収集します。このときのポイントは、片方が調べて相手に教える、という関係性をつくらないようにすること。どちらかが「待っていれば自然に情報がやってくる」という状況をつくってしまうと、妊活中もその関係性を崩せないことが多いです。「このことについて調べたいから、この雑誌を買ってきて」という形でも良いんですよ。一緒にやるのが大事です。 そうして情報を集めたら、「始めどき・終わらせどき」「絶対欲しいのか・できたら欲しいのか」「不妊治療をしてでも欲しいのか・自然妊娠にこだわりたいのか」、話し合わないで進めてしまって「そういうものだと思っていた」という齟齬が起きてしまう、というのは妊活のあるあるです。 S太郎さん 妊活を続ける中で特に不安なのは、このままできなかったらどうしよう、とつねに考えてしまうことです。最近は「子どもがいない人生を受け入れるしかないのかな」もしくは養子を迎えるという方向も考えていたり。 E美さん 私はパートナーがステップアップにあまり積極的じゃないから、もし別れてしまっても、あとから後悔しないように、一人で卵子凍結しておこうかなとは思っています。 戸田さん 不妊治療が難しいのは、50%は何が原因かわからないところです。何をしたらよくなるかがわからないまま治療を進めないといけない、答えが誰にもわからない。検査で原因がわかる場合は、説明がつくので自分を納得させることもできるけれども、「理由がわからない」となると自分を納得させるのも難しいですよね。 私は授からなかった場合の人生についても、話しておいたほうがいいと思うんです。子どもが欲しいと願っていると、「子どもがいない人生は考えられない」と考えることもありますよね。でも、誰しも望んだように授かるわけではないですから、それで授からなかったとして落第点の人生を歩んでしまったと思ってほしくない。実際は、二人で生きる人生もそんなに悪いことじゃないはずですよね。それを二人の間で話し合っておけば、万が一授からなくても「でも、あのとき私たち二人でもこんなに楽しい人生が送れるって話していたよね」と思えるんじゃないでしょうか。 ▶【妊活の本音】お金の分担どうしてる?助成金、保険適用は? に続く 公認心理師/臨床心理士/生殖心理カウンセラー/がん・生殖医療専門心理士/ブリーフセラピストシニア 戸田さやか 性や不妊治療を専門とし、カップル・家族の心理支援を行っている。<ファミワン>ではテキストやオンラインでのカウンセリング、自治体や企業に向けたセミナーを担当。不妊治療専門クリニック、精神科クリニックにも勤務。 イラスト/はらだももこ 画像デザイン/前原悠花 企画・取材・文/平井莉生(FIUME Inc.) 構成/種谷美波(yoi)