こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】今こそマークIIよりも強い個性を主張していた高級FRツーリングワゴン[ブリット]が欲しい!!!
■広い荷室を便利に活用するためのアイディア装備が充実
車内は上品な仕上がりにこだわった作り込みがなされている。メタルメッシュ調の加飾を要所に施すことで高級かつスポーティな雰囲気を演出。ユーザーが触れる部分の質感にこだわりながら、優れた視認性や操作性を実現しているのも見逃せない。 また、スカッフプレートをメタル調とするとともに、アクセル、プレーキペダル、フットレストの表面にスリットバターンのアルミプレートを採用するなど、細部の作りにも抜かりない。こうした作りによって、室内は「高級FRツーリングワゴン」に相応しいものとなっていた。 ワゴンボディなので荷室は十分に広いうえに、使い勝手を高める機能も充実している。5名乗車時でも475Lの容量が確保され、6対4の分割可倒式のリアシートを前方へ倒すことで、さらにワイドでフラットなスペースが出現する。 広い荷室を有効活用するための機能としては、270mmのスライド機構を有したトノカバー、折りたたみ式ラゲッジボックス、さらにフロア下には大容最のデッキアンダートレイが採用された。 バックドアの開口部はスクエアな形状で荷物がスムースに積み込めるよう配慮され、バックドアには、ハンドル内のスイッチを軽く押すことでロックを電気的に解除し、優れた操作性を実現した電気式アウトサイドハンドルを標準装備されている。実用性については申し分のない能力を実現していた。
■卓越したパフォーマンスによって実用車の概念を覆す
スポーティな走りが味わえるのもブリットのセールスポイントだった。パワーユニットは2.5Lターボをはじめ、2.5L、2.0Lの自然吸気エンジンを用意する。いずれも車格に見合う動力性能を持ち味とするが、なかでも2.5Lターボは、低回転域から太いトルクをなめらかに発生させるエンジントルク制御を採用することで、パワフルかつスムーズな走りが味わえた。 売れ筋は2.5L直噴の1JZ-FSEエンジンとなる。直噴化によって超希薄燃焼を可能とし、さらにインジェクターによる燃料噴霧の高分散化、燃料噴霧形状とビストン頂面形状の最適化を追求することで超希薄燃焼領域を拡大。スーパーインテリジェント5速ATの効果も相まって、力強い走りとアクセルワークにリニアに応える優れたドライバビリティを実現しながらクラストップレベルの低燃費を達成していた。 足まわりの特性も"ワゴン=実用車"という概念を覆すものとなっていた。ヨー慣性モーメントを抑えられるFRプラットフォームの恩恵により、操舵に対する応答性が優れ、荒れた路面における収束性も抜群にいい。 特に圧ガスを封入した気液分離タイプを採用し減衰力追従性を高めた新開発リアショックアブソーバー効果は絶大で、状況を問わずハイレベルな操縦性と走行安定性、さらに快適な乗り心地を両立した。 ワゴンの場合、積載する荷物の量による走りへの影響が懸念されるが、ブリットにはセルフレベリング機能が設けられており、乗車人数や荷物積載の量にかかわらず安定した走りと、なめらかな乗り心地が味わえた。 ワゴンでありながら、スポーティなパフォーマンスを持ち味としながら実用性についてもユーザーを満足させるという点では、セダンよりも売れ筋になる要素を持ち、ユーザーの満足度が高いクルマだったのは間違いない。 しかし、実用系車種としてミニバンが市場で急速に勢力を拡大していた状況では販売台数は振るわなかった。そもそもベースとなるセダンのマークIIは販売不振の影響を受け、2004年にモデルチェンジしたのを機に車名を「マークX」へと変更している。しかしブリットはそのまま販売を継続し、「マークII」のネーミングはブリットのみが引き継いだ。 2004年12月には意匠の小変更とテールランプのLED化を実施し、2006年5月にはブリットのスポーティイメージを牽引したターボエンジン搭載車が、排気ガス対策の影響で生産を終了。そして、2007年6月にはブリットそのものが販売を終了した。後継モデルは登場しなかったが、実用的なステーションワゴンでありながら、走りを心底楽しむことができた、なかなかの実力車だったといっていい。