南海トラフ地震への警戒が経済に悪影響:旅行関連消費は1,964億円程度減少も
南海トラフ地震臨時情報の発表
8月8日に、宮崎県の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。この地震で宮崎県日南市では最大震度6弱が記録された。日向灘を震源とする地震で震度6弱以上の揺れを観測するのは1919年以降で初めてである。またマグニチュード7以上は1984年8月のマグニチュード7.1以来の規模だ。 後続するさらなる巨大地震の可能性が相対的に高まっているとして、気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。政府は、南海トラフ地震防災対策推進地域に対して、地震発生から1週間、日頃からの地震への備えの再確認や、揺れを感じたら直ちに避難できる態勢をとるように呼びかけている。 南海トラフ沿いでは、地震発生後に時間差で巨大地震が発生した事例が知られている。江戸時代の1854(安政元)年に起きた安政東海地震の約32時間後には、安政南海地震が発生した。また、1944年の昭和東南海地震の2年後の46年には昭和南海地震が起きている。 とりあえず地震発生から1週間が強い警戒の目途ではあろうが、過去の例を踏まえるとそれ以上の期間、大規模な南海トラフ地震発生への警戒は続くだろう。 まずは、多くの人命を危険に晒す大規模地震が発生しないことを強く願うばかりではあるが、実際には予測は難しいことから、従来以上に地震への備えが求められる。
地震発生後には消費活動は委縮
地震発生への警戒や備えは、経済活動を委縮させる面がある。過去には、阪神大震災や東日本大震災の発生後に、経済活動の低下が生じたことが確認されている。東日本大震災の発生後の経済への悪影響は、地震による自動車産業でのサプライチェーンの遮断や原発事故による電力不足によるものが大きかった。今回はこのようなことは起こっていないが、先行きの地震発生への不安から、消費者は消費活動を控える動きをするだろう。 内閣府によると、震災後は消費者マインドが委縮し、消費者は必需的でない財・サービスの購入を控える傾向がある。東日本大震災後の百貨店の売上高は、東北地区のみならず東京地区及び全国ベースで見ても、2011年3月に大きく落ち込んだ。阪神・淡路大震災直後の1995年1月においても、神戸地区のみならず全国ベースでも百貨店売上高は一時的に大きく減少していた(内閣府)。 ただし、震災後に最も顕著に表れるのは、旅行・レジャー関連だろう。震災後には自動車など高額耐久財の消費を控える傾向もみられるが、他方で生活必需品の買いだめの動きも生じることから、財消費への影響は比較的限定的だろう。