女子プロゴルファー“暴言事件”はなぜ起こったのか?
某女子プロ選手の個人的資質の問題はもちろんある。暴言に至った経緯、従業員とのやりとりの詳細は不明だが、どんな事情があるにせよ、人に対して「死ね」と言う言動をしたのは完全にアウト、許されるものではない。おそらく、某女子プロ選手自身は、感情の赴くまま発言しており、ここまで大騒動に発展すると予想していなかったのではないか。しかし、だれもが踏み越えられるラインではなく、そういう資質が、この選手の中にあったからこそ、口をついて出たのだろう。 ただし、今回の問題を某選手個人の責任で片付けるのではなく、女子プロゴルファー全体の問題として捉えるべき部分もある。 そもそも、なぜ、コース側が浴場の脱衣場にバスタオルを設置するのを止めたのか。前述したが、これまで脱衣場をストレッチ場所として多くのプロが使っていて大会が終わるとバスタオル紛失が続いた。それが繰り返されたため、コース側と運営側が話し合いを行い、今回の措置になった。平たく言えば選手がバスタオルを持って帰るから置かなくなったのである。 シード権を持つようなトップ選手は、メーカーと用具使用契約を結ぶ。トップ選手でなく契約に至らないプロであっても、多くは、各メーカーから用具提供を受けている。つまり道具をただでもらえる。また用具提供は、プロに限らず、ツアー競技に出場するようなトップアマも対象。そんな環境が「道具は買うもの」という一般常識の欠落につながってしまった可能性があるのだ。 かつてプロゴルファーは中学、高校を卒業後、ゴルフ場に研修生として入り、キャディー、雑務をこなしながら先輩プロである師匠について、ゴルフの技術を習得し、プロテストを受験するルートが王道だった。プロゴルファーになっても、選手同士が連絡を取り合い、試合中は旅館の大部屋で雑魚寝をしたりしていた。そういうプロセスを踏む中で社会性や礼儀、モラル、人間関係を身につける環境があった。 だが、昨今の事情は少し違ってきている。ジュニア育成が盛んになり、10歳に満たない頃から職業コーチに学ぶ。高校時代も、トップアマになるほどゴルフ一色の日々を送る。通信制として登校せずとも高校卒業の資格がとれる手段もできた。傍らには常に親がべったりついていて、身の回りの世話をする。それがプロになっても続く。