NPBファームでも躍動する、独立リーグで3年連続無双した「流浪の右腕」
* * * 店の人気メニュー、まぐろ丼(大盛)とカマの煮付けを頬張る平間は、高知時代よりさらに体つきが大きく逞しくなった印象を受けた。 取材時点での体重は100kg(身長187cm)。オフの筋トレでもかなり追い込んだそうだ。寮では高知時代のチームメイト、草場悠捕手と共同生活だが、普段外食はせず、栄養価やカロリーの計算をして自炊している。自身の料理はSNSで「平間飯」として紹介している。 「低カロリー、高タンパクのアスリート飯ですね。料理を覚えたのは独立リーグ(高知)時代です。それほど器用ではないので、誰でもできるような簡単なメニューだけですが。そんな素人料理でも、将来的に野球に生かせるのではないかという思いで続けています」 中継ぎ、抑えとして結果を出したが、ここからは筋肉は落とさず体脂肪のみ削り、スタミナを持続できる先発投手向きの体づくりをしている。 「当たり前のように155キロ以上投げられる投手ならば中継ぎをやるべきですが、僕はそういうタイプではない。今、僕のストレートは平均90マイル(約145キロ)なので。となれば海外では先発しか需要はない。これからは先発で長いイニングを投げられることを証明していきたいと考えています」 高知ファイティングドッグスを取材した際、監督の吉田豊彦氏は平間をこう評していた。 「相手バッターを分析する目、感じる力は持っています。それなのに、自分の登板になると抑えることに執着し過ぎて状況が見えなくなるときがある。独立リーグの選手に対してはエイッ!と投げれば抑えられる。でもNPB相手ではそううまくはいかない。実際、去年のフェニックスでボコボコにやられた」 平間の投手としての考え方は、当時からずいぶん成長したように思えた。 平間が目指しているのは、海外トップリーグなど高いレベルで野球を続けることだ。そしてもうひとつ。NPB12球団にドラフト指名されることも完全には諦めていない。現実的にかなり厳しいのは百も承知。しかし、NPB1軍の舞台で力を試したいという気持ちは失っていない。そんな平間の思いを知ってか知らずか、ある名伯楽が冗談混じりにこんな言葉をかけてきた。 「平間、年齢詐称しろ」 (つづく) ●平間凜太郎(ひらま・りんたろう) 1994年生まれ、東京都出身。山梨学院大附高から専大に進学し、日本製鉄東海REX、高知ファイティングドッグス、メキシコリーグでもプレーした。高知では2020年、21年に最多セーブ、22年には最多勝と最優秀防御率のタイトルを獲得し、年間MVPにも輝いた。23年オフに参加したメキシコ教育リーグでは6試合に登板し、2勝1敗、防御率1.69という好成績を残した 取材・文・撮影/会津泰成