日鉄株が下落、バイデン大統領のUSスチール買収計画の阻止判断で
(ブルームバーグ): 日本製鉄の株価は6日、バイデン米大統領がUSスチール買収計画を阻止する決定を下したことを受け下落した。両社は「法的権利を守るためにあらゆる措置を追求する」としているが、買収が失敗すれば日鉄は成長戦略の見直しや違約金の支払いが必要となる可能性がある。
日鉄の株価は午前の取引で一時前営業日比2.3%安の3108円を付けた。バイデン大統領による判断を受け、USスチール株は3日の取引で6.5%安となっていた。
SMBC日興証券の山口敦アナリストらは6日付のリポートで、事前の報道により買収が成立する可能性は低いと織り込んでいたものと思われ、「サプライズはない」とコメントした。
日鉄が2023年12月に発表したUSスチールの買収計画を巡っては、対米外国投資委員会(CFIUS)が国家安全保障上の脅威となるか審査を行っていたが意見がまとまらず、最終判断が先月、バイデン大統領に委ねられた。
日鉄や日本政府からは反発の声が上がる。日鉄は3日に公表した声明で、決定は「バイデン大統領の政治的な思惑のためになされたもの」と批判。武藤容治経済産業相も同日、日本の産業界から今後の日米間の投資について強い懸念の声が上がっており、懸念払拭に向けた対応をバイデン政権に求めていくとした。
日鉄はバイデン大統領の決定について7日に会見すると、共同通信が幹部への取材を基に報じている。
ただバイデン大統領による決定を覆すハードルは高く、USスチール買収を通じて規模の拡大を目指していた日鉄は成長戦略の修正を余儀なくされる公算が高い。
また、買収の不成立となれば日鉄には5億6500万ドル(約890億円)の違約金を支払う必要が生じる可能性がある。同社は今期(25年3月期)の純利益は前期比44%減の3100億円になると見込んでおり、違約金による痛手は小さくない。
山口アナリストらは違約金は保有資産の売却などにより吸収可能との見方を示した。「経済好調な米国市場への進出による長期的な成長期待の後退はネガティブ」だとした上で、USスチール買収がなくても、インドでの鉄鋼事業や資源事業の拡大で粗鋼1億トン、事業利益1兆円を達成すると予想した。
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Tsuyoshi Inajima