「おばさん構文のコミュニケーション能力は抜群」尾木ママが大切にしている“気遣いと共感”
おじさん構文、おばさん構文、句点「。」の使い方など、文字コミュニケーションに関する話題は日々尽きない。なかでも「おばさん構文」について、教育評論家の尾木直樹先生は「僕がブログに書く文章なんて、ほとんどがおばさん構文そのものよ」と明るく語る。“尾木ママ”の愛称で親しまれている尾木先生は、なぜそういった言葉遣いを選んでいるのか。おばさん構文の根幹にある気遣いと共感について、話を聞いた。(Yahoo!ニュース Voice)
おばさん世代も、若い子たちも、みんな相手をおもんぱかっている
――よくネット上で「おばさん構文」が話題になっていますが、どう思いますか? 尾木ママ: 僕がブログに書く文章なんて、ほとんどがおばさん構文そのものよ。特徴はいくつかありますけども、文章のワンセンテンスが長かったり、語尾に「だわね」って付けたり。明るい気持ちを表現する時には、絵文字や音符を付けたりするの。しかも、にっこりマークなら一つじゃ気が済まなくて、三つぐらいパパパンと打っていきます。それから私がよく使うのが「伸ばし棒(~)」で、使わない文章はほぼないです(笑)。 これら全ては、自分の気持ちを一生懸命伝えつつ、相手の心へ飛び込もうとしている表現なんです。おばさん構文の基本は、相手への気遣いなんですね。ちなみに、女性の脳は共感脳と言われることもありますが、「すごいよね」とか「やったわね」とか、相手の気持ちに共感することが得意です。例えば、おばさん構文で文章の最後に付ける拍手の絵文字。これはまさに、自分の共感を相手に伝える絵文字ですよね。だから私は、おばさん構文のコミュニケーション能力は抜群だと思っています。安心感で、相手の心と繋がっていくことができますから。 ――尾木さんは若者と関わる仕事が多いと思いますが、おばさん構文について話題になることはありますか? 尾木ママ: 実はこのあいだ、おばさん構文をどう思うか、高校生の女子に感想を聞いてみたんです。「ちょっと古いわね」って言われました。彼女たちは常に短文でやりとりする「LINE文化」の中で育っていますから、一通で伝えたいことを全て伝える「メール文化」に馴染みがないですよね。なので、一文が長くまるでメールみたいに見えるおばさん構文に対して、古さを感じるんだと思います。 ――なるほど、中高年は「メール文化」の中で育っていますが、若者は「LINE文化」の中で育っているんですね。両者の違いを感じたエピソードはありますか? 尾木ママ: 学生から取材依頼のメールをもらう時があるんですが、その際にLINE的な文章が来る場合があります。「先生の所で取材させてください」という内容だけで、いつ希望しているのか、具体的な詳細が何にも分からない。こちらから折り返して「いつにする?」って優しく聞いて、2~3回くらいやりとりをしないと、言いたいことの全貌がつかめなくて。メール文化で育ったウチのスタッフたちは、「何回も聞き返さなきゃいけないなんて、LINEじゃないのになあ」って、少し戸惑ってるみたい。 でもそれは、メールからLINEへとツールが変化しているから起こってしまうことで、若い子たちを責めるわけにいかないと思うの。世代によって、情報交換の方法が異なるだけ。だからどちらが良くてどちらが悪いということではないんです。 それに、現代の子どもが相手に全く気を遣っていないかといったら、そうではないの。めちゃくちゃ気を遣っています。今、中高校生のあいだで、お互いの居場所が分かる位置情報アプリが流行ってるの。なぜかって、相手が今どういう状況なのかを知るために、アプリを使ってるんですね。「あ、今すごく移動スピードが出ているから、塾の帰りかな」「そうしたら、もうちょっと経ってから連絡を入れよう」とか。相手が動かずにじっとしてたら「入浴中かもしれないから後にしよう」とか、とにかく相手優先に動いています。おばさん世代も、今の若い10代の子どもたちも、みんな相手のことをおもんぱかる。こういう所は日本人らしい特性だと思います。