「修学旅行のための数万円」で加担するケースもーー若者を闇バイトから守るために大人ができること #こどもをまもる
闇バイトに巻き込むための手口は数多くある。「誰でも巻き込まれる可能性がある」と三浦さんは語る。 「基本的に詐欺や犯罪行為の入り口というのは『コミュニティー』なんですよ。その準拠集団にたまたま所属しているだけで、気づいたら周りはみんなやってる、みたいなことが起こりうる。しかもいまはSNSやマッチングアプリで、全く知らない人と出会うことが簡単になっている。つながりのなかったところから、急に巻き込まれる、ターゲットにされることが起こりうるんだなと思います」
元法務教官から見た、非行少年と闇バイトの背景
2012~2021年の9年間、少年院で多くの少年と向き合ってきた元法務教官の安部顕さんにも話を聞いた
安部さんが少年院に勤務していた頃はまだ「闇バイト」という言葉はあまり知られておらず、「特殊詐欺に加担して入ってくる子ども」が多かったという。 「闇バイトは、特殊詐欺が『進化』したような形で出てきた手法です。特殊詐欺の場合も、末端の子どもたちは地元のコミュニティーのなかで『悪いけど、ちょっと手伝ってくれ』と先輩に言われて、手伝っていたら実は詐欺だった……みたいなケースが多かった。そして、どんどん切り捨てられていくんですよ」 詐欺の中心人物たちは、地域コミュニティーのなかでお金に困っていそうな若者を探して声をかけ、受け子・かけ子などの実働をさせては、下っ端として使い捨てていくという。 「いまはSNSが普及したことで、もっと地方の、コミュニティーが希薄なエリアの子どもたちにも訴求できるようになった。お金がほしい子に『よいバイト紹介するよ』『東京に来なよ、交通費も出すよ』『言った通りにやってくれれば、1日で何万円も稼げるよ』と声をかけて、また使い捨てられる下っ端を見つけるようです」 若者が誘いに乗ってしまう背景もさまざまだ。貧困家庭で、生活するために仕方なく加担するケースもあるだろう。しかし、それだけではないと安部さんは語る。大人には小銭のような金額でも、子どもにとっては人生を前に進める大金になりうると指摘する。 「数万円、下手すれば5000円すら大金になりうるんですよ。修学旅行に参加するためのお金が払えないとか、志望校の受験料が3万円だけど、親が3万円しか用意できないから滑り止めが受けられないとか。一生をかけるほどの金額じゃないはずだけど、その子にとってその瞬間の3万円というのは本当に大きい」