前記録保持者の元近鉄監督が語る阪神ドラ1佐藤輝明の実力「王さん、イチロー級…今年は25~30本。3年目に3冠王を狙える」
佐藤にはプロの洗礼に対処できる“メンタルの図太さ”があるというのだ。佐々木氏が、視察していた大商大戦で、第1打席に左腕投手にインハイを攻められ、デッドボールを受けたが、その後の打席に影響が見られなかったという。 「ぶつけられた後の打席に注目していたんだが、同じ左腕にまたふところを攻められても開こうともせずに打ちにいっていた。崩れない芯の強さは持っているなと感じた」 それらを総合的に判断して佐々木氏は佐藤の1年目の数字をこう予想した。 「当初は、22、23本と思っていたが、オープン戦での適応能力を見ていると、25本から30本の間を打てるような気がしてきた。25本をクリアしたら打点も80打点は超えるよね。打率は.270、280は打つかな。30本というひとつの壁があって清原の持つ31本の新人最多記録を抜くのは難しいかもしれないが、それをやったら本当の怪物」 セ・リーグには清原氏超えを果たすための追い風があるという。 「パ・リーグは、多少コントロールを間違っても球威や変化球のキレで抑え込んでいく投手が多い。一方、セ・リーグは、配球で相手を抑えにかかるところばかり。その野球観の差が日本シリーズの4勝0敗につながっているんだろうが、そういうセの環境だと佐藤が真価を発揮できる可能性は高い」 もちろん課題はある。 「真っすぐに対しては、左足に体重が残りかけて、悪い言い方をすれば、そっくりかえるような形で打つよね。本番で各チームの一流投手が出てきてコースを攻められるとヘッドの下がる打ち方にされてしまう危険性がある。このあたりが課題になるんだろうけど、今は、逆に変化球で少しずらされると両足にしっかりと体重が乗ったところでボールをつかまえることができている。今後、彼が経験を積む中で、真っすぐに対しても同じように両足に体重が乗って、軸足も前足の壁も効いて回転して打てるようになると、今度は変化球を泳ぎ気味に打てるようになってくる。そうなれば相手バッテリーは攻めようがなくなってくる」 佐藤の持つポテンシャルと期待できる対応力。佐々木氏がプロを生き抜くためにスタイルを変えたように佐藤も、頭を使い、自らを進化させていけば、とてつもないゴールが待ち受けていると見ている。3冠王の可能性だ。 「野球界の歴史を紐解けば、多くの名選手がいるが、左打者としては、王さん、張本勲さん、イチローが別格でしょう。佐藤は、将来、その別格の中に入っていく可能性を持っている打者。落合博満は、3冠王を3回とったが、佐藤も3年目には3冠を狙えると思う。日本の宝が出てきたよ。こういう選手と一緒に野球をやりたかったね」 日本球界では2004年の松中信彦氏(ダイエー)を最後に3冠王は出ていない。セ・リーグでは、1986年のランディ・バース氏(阪神)以来誕生していないが、佐々木氏は、佐藤は、歴史を塗り替えるだけの逸材だと断言した。