40代、50代の気持ちがラクになる「幸福学」講座/自分を幸せにすることに、罪悪感を覚えてしまうのはなぜ?
自分だけが楽しむことに、どこか罪悪感を持ちがちなOurAge世代。人間関係のしがらみから解放されて幸せな人生を手に入れるには、どうすればいい? 「幸福学」を専門とする慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司先生に、OurAge世代特有の「幸福になれない悩み」に回答してもらった。
自己犠牲になっている人ほど、「ありがとう!」因子が必要
「老後が不安なので、今のうちから生きがいを探そうと、趣味などをいろいろと頑張っています。でも、どれもあまり続きません。子育て、親の介護など、家族の世話を中心に生きてきたので、自分を優先することにどうしても罪悪感が湧いてくるのです。同年代で、楽しそうに推し活をしている友人を見るとうらやましい限り。生きがいって、どうすれば見つかりますか?」(50代・会社員) ――身近な周囲の人(子ども、夫、家族など)よりも自分を優先することに対して、罪悪感を持ってしまうという、40代、50代の女性が多いようです。 この方は真面目な、とてもいい人ですよね。お子さんがいらっしゃる方は特に、自分の楽しみを優先すること、例えば家族のごはんも作らずに飲みに行っちゃうなんてよくないよね、というふうに思いがちかもしれません。このお悩みの中には、自己犠牲からの脱却、そして自分の生きがいの発見、というふたつのテーマがあるように思いました。 ――確かに、そうですね。まず自己犠牲的になってしまうことについては、どうすればいいのでしょうか。 幸福学では、自分に感謝すること、そして他者に感謝することが大切であることを、過去の回ではお伝えしました。身近な人にはわがままが出てしまう、という人に関しては、他者への感謝というセンサーを磨くことが大切なのですが、自己犠牲的になりがちな40代、50代の女性の場合は、自分に対する感謝を多く、深めていくことがおすすめです。 テキサス大学の心理学者、クリスティン・ネフ博士が提唱した言葉に、セルフ・コンパッション(Self-Compassion)というものがあります。自分への慈しみを意味していて、他者をいたわり思いやるのと同じように、自分自身のことも大切に思うことを味しています。 ――自己犠牲的に生きてしまっている人は、自分を大切にしていない、ともいえるのでしょうね。幸福学で提唱している「幸せの4因子」でいうと、「ありがとう!」因子を自分に向ける、ということになりますか? そうです。日本の場合、女性のほうに家事育児の負担が大きくなる社会構造が長く続いたせいで、OurAge世代の方々はその影響も強く受けているのではないでしょうか。古い考えもまだ残っているので、そこはみんなで変えていかないといけないところですね。 ――本当に。でも、社会制度が変わるのを待っていたらきっと老後になってしまうので(笑)、自分に感謝して、思いやりを与えることから始めるのはいいことだと思います。一人一人の意識が変わったほうが、幸せを手に入れるのも早いような気が、ちょっとしました。 おっしゃる通りで、僕のまわりには自分で変えていった方がたくさんいます。国に任せるのではなく、自分が変わらないと、幸せになれませんよね。幸せな自分は、自分でつくる。老後に向けて趣味を持ったり、助け合って生きていく仲間をつくったり、幸せな60代以降に向けてソフトランディングするための準備に取りかかるのが、40代、50代という年代なんですよね。