繰り返し吐いてつらい「周期性嘔吐症候群」、見逃されすぎ? 「腸の片頭痛のようなもの」
脱水症状や入院も、予防や治療法は
突如として激しい吐き気や嘔吐、胃痛に見舞われ、それが1~2日かそれ以上続くと、食中毒や胃腸のウイルス感染を疑うだろう。しかし、こうした症状が年に何度も起こるようであれば、それは「周期性嘔吐症候群(CVS)」の兆候である可能性がある。あまり広く知られていないこの病気は、米国では約2%の人がかかっていると考えられており、日本では0.032%、中でも子どもでは0.21%が罹患しているという研究がある。 ギャラリー:炎症を抑える食べ物とは、病気の進行やがんの治療にも影響 写真6点 米国消化器病学会は7月、CVSの新たな臨床ガイドラインを公表した。 CVSは「脳腸相関」(腸と脳の双方向的な関連)に関わる慢性疾患だ。吐き気、嘔吐、空吐きを繰り返すこと、そうした発作の間には症状のない期間が挟まれることを特徴とする。発作は痛みと精神的なつらさを伴い、脱水症状を引き起こすケースも少なくない。また、トイレにこもりきりになるため、仕事や学校を休まなければならない場合もある。 「この疾患が、以前考えられていたよりも広く見られるという認識が高まりつつあります」と語るのは、米ピッツバーグ大学医療センターの消化器科医・神経科学者デビッド・レビンソール氏だ。その点は米国消化器病学会のガイドラインでも、実際の患者に比べてCVSの診断が下された人が少なすぎる可能性が高いと指摘されている。 「CVSを念頭において診察している消化器科医はそう多くありません。診断も治療も受けられずに苦しんでいる患者が大勢いるのです」とレビンソール氏。 その理由のひとつとしては、脳腸相関に関わるその他の疾患と同じく、CVSが医学教育で優先的に扱われていないことが挙げられると、米マサチューセッツ総合病院の消化器専門医クリストファー・ベレス氏は言う。 「これはいわば腸の片頭痛のようなものであり、神経系を介して起こる、異常で抑えがたい現象なのです」。しかし、現代の診断技術では、医師にも何が問題なのかが明確にわからないため、「ときには作り話だとみなされます。生活の質が大きく損なわれているにもかかわらず、そうした症状について患者が責められることもあるのです」