高層ビル、タワマンで注意 長周期地震動 ゆらゆらした揺れが10分続くことも【暮らしの防災】
<上層階で何が起きるのか>
気象庁は、長周期地震動を4つの階級に分けています。それを「長周期地震動階級」と言います。いわゆる計測震度が地面の揺れの大きさを表しているのに対して、「長周期地震動階級」は長周期地震動による建物の揺れの大きさを表しています。 HPから引用したイラストからわかるように高層階では、耐震固定がされていない家具や道具・器具が動き、階級3や階級4では倒れるものもあります。重いものでも動いたり倒れたりするので大変危険です。 イラストではオフィスでの現象が紹介されていますが、高層ビルのショッピングモールの店舗・レストランの場合、陳列棚やショーケースが動き、食事が載ったテーブルがゆさゆさ揺れます。座っている椅子も大きく動きます。 高層マンションの部屋でも、家具などの耐震固定が不十分だと、キッチンの冷蔵庫・電子レンジ、リビングの家具・薄型テレビが動いたり倒れたりします。場合によっては、歩くこと・避難すらできなくなります。とても危険です。 東日本大震災の時は、超高層ビルの上層階の左右の揺れ幅が最大3mに及んだり、ゆらゆらした揺れが10分近く続いたりするなど、そこにいた人は「本当に怖かった」と話しているということです。
<緊急地震速報 長周期地震動階級>
気象庁は 2023年2月1日から、「長周期地震動階級」に基づく緊急地震速報が発表されるようになりました。緊急地震速報は、計測震度については「最大震度が震度5弱以上と予想され、震度4以上」が予想される地域に向けて出されています。 そして「長周期地震動階級」については、「階級3」と「階級4」の揺れが予測される地域に対して発表されます。気象庁は「概ね14~15階建以上の高層ビルが対象」としています。 2024年1月1日の能登半島地震の時は、地震波検知から6.0秒後の16時10分16.0秒に「緊急地震速報」が石川県能登に対して発表され、40.0秒後の16時10分50.0秒に「長周期地震動階級3」が石川県能登に対して発表されています。このように、「長周期地震動階級」の情報は少し遅れて出される可能性もあります。 大地震の場合は緊急地震速報の内容が更新され、次々と発表されます。「うわっ!緊急地震速報だ」「あっ!揺れ始めた」というバタバタする瞬間で、的確な判断ができない可能性があります。 また、テレビ画面に表示する字幕スーパー・スマホに配信されるエリアメールなどの緊急地震速報は、表示できる文字数の関係から「強い揺れに対して」なのか「長周期地震動階級」なのか判別できません。 実は、身の安全を図る行動は、「強い揺れ」「長周期地震動」いずれに対しても、ほぼ同じですので、緊急地震速報が発表されたら、「家具などから離れる」「頭を守って頑丈なテーブルなどの下に隠れる」などすぐに身の安全を図ること、さらに高層ビル・高層マンションにいた場合は、「姿勢を低くして飛ばされないようにする」などの行動をしてください。 ◇ 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。 ■五十嵐 信裕 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。