「老害」にならないための“脳トレ”は45歳からやる 鍛え続けて「老害脳」の進行を遅らせるのがカギ
脳の老化には個人差があり、もちろん生物学的な意味でもそうなのですが、一方で個々が置かれている環境や生活習慣にも大きく左右されます。 たとえるなら、筋肉と筋トレの関係にも似ています。筋肉や筋力を維持するためには、適切な筋トレや栄養摂取が大切なことは論を待ちません。 しかし、つい面倒くさくなったり、ケガや病気などでトレーニングができなくなったりすれば、筋肉はたちまち衰えてしまいます。筋肉は正直で、ウソをつきません。手入れを怠った肌が早く老化していくのも同じことです。
組織に属している方なら、加齢によって脳が老化すれば、新しいことはそのまま面倒な仕事とイコールになり、若い人や部下に任せるようになります。 これは筋トレをサボっているのと同じ状況です。そうしている間に、以前なら自分自身でも楽々処理できたはずのことさえ、いずれできなくなってしまうわけです。 私たちが自分の「老害脳」化を恐れるなら、脳の中年期にトレーニングを持続的に行うことで、そして脳に刺激を与え続けることで、できるだけ脳の中年期を引き延ばし、高齢期入りを遅らせることができるようになります。
特に危険なのは定年退職がある方です。60歳、65歳などの段階で、自分の意思とは関係なく急に環境や待遇が変わります。モチベーションが大きくそがれることもあるでしょう。 そこを乗り越え、なお新しいことを学び、未知の出来事に関心を持ち続ける「脳の筋力」を維持できているか。それによって、残された20年以上の人生における楽しさや喜びは、大きく変わってくるでしょう。 私は脳科学者として、誰もができれば85歳まで、少なくとも80代前半までは、健康な脳のままで生き続けることを追求すべきだと思いますし、それは可能だとも考えています。
■90歳を超えても老害脳とは無縁の生活が可能 私は、2019年に101歳で亡くなった随筆家・評論家の吉沢久子先生と生前親しくさせていただいていたのですが、90代でもまるで20代のような感性を保たれ、事前の打ち合わせなしにイベントをご一緒させていただいたときも、アドリブでどんどん場を沸かせる方でした。 年下の私に対しても尊大な態度を取られることもなく、嫌な思いをさせられたことは一度もありませんでした。