トゥーロン国際準Vで東京五輪正GK争いに名乗りを挙げた逸材オビ・パウエル・オビンナ
右手に悔しさをこびりつかせたまま、U-22日本代表のGKオビ・パウエル・オビンナ(21)=流通経済大学4年=は成田空港に降り立った。数台のテレビカメラを含めて、羽田空港から日本を飛び発った5月29日とは比べものにならない数のメディアが、到着ロビーに待ち構えていた。 フランスで開催された第47回トゥーロン国際大会で、歴代最高位となる準優勝を果たした東京五輪世代のU-22代表が17日に帰国。全5試合のうち3試合でゴールマウスを守ったオビが、1-1のまま決着がつかず、PK戦に突入したブラジル代表との決勝戦のワンシーンを無念そうに振り返った。 「あの場面は本当に悔やまれるというか。ああいうところをもっと突き詰めていかないと、優勝というものを手にするのは難しいと感じました」 先蹴りのブラジルの1番手、「10番」の選手と対峙しながら、相手の体全体から発せられる雰囲気や視線を含めた表情、そして事前に得ていたスカウティングデータをもとに右へ飛ぶと決めていた。 「しっかりと読みが当たって、手も届いたのに、最後の体の伸びというものがまだまだ自分は甘かったので。もっと突き詰めていって、止められるようなキーパーになりたい」 自分から見て右隅を狙ってきたボールに、ダイブしながら伸ばした右手を必死に当てた。しかし、身長193cm体重81kgの恵まれた体が伸びきっていなかったこともあり、最後の力を加えることができなかった。オビの右手を弾いた強烈な弾道がゴールインした瞬間から、ブラジルが波に乗った。 その後のキッカーも全員が確実に決めた。2番手の選手のコースを読み切り、再び右へ飛んだオビだったが、相手はそれ以上に厳しいコースを寸分違わず射抜いてきた。対する日本も4番手までは決めて食い下がったが、最後のFW旗手怜央(21)=順天堂大学4年=の一撃が、向かって左へ飛んだ相手ゴールキーパーにがっちりとキャッチされた瞬間、大会初優勝という夢が潰えた。 「レベルの高い大会に出られて、決勝までいけた。結果は準優勝でしたけど、日本では経験できないタイミングでパスを出してくる選手や、縦への動き出しを何回も仕掛けてくる選手がいたなかで、いままで以上に見えるものが増えて、自分のためにもなった大会だったと思っています」