トゥーロン国際準Vで東京五輪正GK争いに名乗りを挙げた逸材オビ・パウエル・オビンナ
フランスの地で貫いた心境をこう振り返ったオビは、ナイジェリア人の父と日本人の母との間で、埼玉県で生まれ育った。ゴールキーパーへ転向したのは大宮アルディージャのジュニア時代。最後尾を守る姿にカッコよさを感じていただけに、中高一貫で学ぶJFAアカデミー福島、そして流通経済大学と順調に実力を伸ばし、年代別の日本代表にも名を連ねてきた。 森保監督の就任以来、今回のトゥーロン国際は東京五輪世代にとって8度目の招集となる。呼ばれたキーパーは現時点で総勢7人。小島とオビ、今回も招集された波多野豪(21)=FC東京=が5度で並び、同じく今回招集されている、フランス人の父と日本人の母をもつ山口瑠伊(21)=エストレマドゥーラ=が4度で続いている。 トゥーロン国際の指揮を託されたフル代表の横内昭展ヘッドコーチ(51)は、グループリーグの先発をオビ、山口、波多野でローテーションさせた。そのうえで準決勝以降はオビを選び、ブラジル戦ではゲームキャプテンも任せた。第2集団から、こう語るオビが一歩抜け出したかたちだろうか。 「現段階のレベルであの2人が評価されているから、コパ・アメリカの代表に選ばれていることはもちろん理解している。だからこそ僕はクロスボールへの対応というものを、自分の絶対的なストロングポイントにしたい。今大会でもミスをしましたけど、積極的に出ていったからだと思っている。何度ミスをしても、それでもトライし続けると自分に言い聞かせている」 サイズを比べれば、小島は身長183cm体重79kgで大迫は186cm86kg。2人を凌駕している上に身体能力の高さも搭載し、細かいポジショニングや足元の技術で成長の余地があると自負しているからこそ、ゴールキーパーの枠が「2」しかない東京五輪本番へ向けて、これからが勝負だと力を込める。 「身長が高いからこそできるプレーもあるし、積極的な姿勢を貫くなかで飛び出すことを自重する判断といったものをもう少し磨いていけば、プレーの正確性や安定感も出てくると思っている」 卒業後はプロとしてプレーすることを決めている。すでにJ1北海道コンサドーレ札幌からオファーが届いているなかで、最終学年を迎えた大学サッカーに照準を切り替えながら、小島や大迫と同じ舞台に立つルートを熟慮しながら絞り込んでいく。 「(2人との)差を意識しすぎず、自らがやるべきことをやっていけば、いずれはオリンピックというものが近づいてくると思っているので。いまはそのことだけを考えています」 大迫が急成長しているものの、東京五輪世代の戦いではまだインパクトを残していない。すべては本大会までの1年あまりの日々を、いかに過ごすかにかかってくる。準優勝の快挙とともに手応え、自らの課題、何よりも自然体で臨むことの大切さを手土産に帰国したオビの巻き返しが始まる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)