紅麹サプリの健康被害拡大 小林製薬と政府、対応に追われる 不安払しょくへ機能性食品を緊急総点検
小林製薬(大阪市)の「紅麹(こうじ)」成分を含むサプリメント(サプリ)との関係が疑われる健康被害が拡大している。報告される死者や入院患者数は増加傾向にあり、事態の深刻さが増している。問題のサプリ原料から青カビ由来の「プベルル酸」が検出された。だが被害との詳しい因果関係は依然はっきりしない。問題の商品が属する「機能性表示食品」だけでなく、広く健康関連商品に対する不安が広がっている。 厚生労働省や消費者庁などの政府関係省庁は事態を重視し、約7000件の届け出があった機能性表示食品の緊急点検を始めたほか、関係省庁連絡会議を開くなど対応に追われている。同省と大阪市は3月30日に紅麹原料を製造していた小林製薬大阪工場(同市淀川区)を、31日に和歌山工場(和歌山県紀の川市)を、それぞれ食品衛生法に基づく立入検査を実施した。
健康への効能を表示できる「保健機能食品」として、「栄養機能食品」「特定保健用食品」に続いて2015年から届出だけで販売できる機能性表示食品が加わった。機能性表示食品に関連した健康被害が出たのは初めてだ。国民の健康志向の高まりを受け、ドラッグストアなどでは同食品であることを表記した健康サプリが並び、売り上げは目立って増加している。 今回ヒット商品で被害が出た。消費者の不安を払しょくするためにもまず、小林製薬や厚労省は原因物質が「プベルル酸」なのか、第3の物質かなど、早急に、詳しく原因を究明することが求められている。そして全ての機能性表示食品、さらに多種多様なサプリがある健康関連商品の安全性の確認も急がれる。
摂取後死亡5人、入院110人超える
厚労省と小林製薬によると、4月1日正午までに小林製薬から同社のサプリ3製品との関連が疑われる5人の死亡例が報告された。このうち判明した属性分は70~90代の男女。摂取後に入院した人は114人に上るという。同社によると、昨年9月以降に製造された「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人に腎疾患などの健康被害が偏っている。 厚労省は「有害物質が含まれている疑いがある」と判断。小林製薬本社がある大阪市に対し、必要な措置を取るよう通知した。同市は3月27日、食品衛生法に基づいて自主回収対象3商品の回収命令を出した。3商品は「紅麹コレステヘルプ」と「ナイシヘルプ+コレステロール」「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」。「紅麹コレステヘルプ」だけでもこれまでに約100万個が販売されているという。 大阪市によると、問題の3商品の流通量は多く、回収には数カ月程度かかるとみられているが、回収後は改めて廃棄命令を出す方針だ。同市はまた、小林製薬に対し原因究明の調査状況や健康被害情報のほか、紅麹原料の販売状況、製造工程に関する情報などの報告を求めている。 林芳正官房長官は3月27日の記者会見で「今回の事案は機能性表示食品の安全性に対する疑念を抱かせる深刻なものだ」と述べた。政府は同日午後に政府内の連携を緊密にするため、厚労、農林水産両省と消費者庁などが関係省庁連絡会議を開いた。この場では被害情報などの共有を徹底し、対応を速やかに進めていくことを確認した。今後も消費者庁が事務局を務めて適宜会議を開催し、検討結果を順次公表するという。 岸田文雄首相も28日開かれた参院予算委員会で「原因を明らかにし、必要ならあらゆる対応を検討しなければならない」と述べた。