紅麹サプリの健康被害拡大 小林製薬と政府、対応に追われる 不安払しょくへ機能性食品を緊急総点検
小林製薬が製造した紅麹原料は自社のサプリ用のほか、食品の着色や風味付け用として企業向けに販売していた。厚労省は情報提供の遅れが被害の拡大を招いた恐れがあり、原料を供給した企業への連絡も後手に回ったとみている。消費が拡大している機能性表示食品に対する信頼も揺らいでいる。同社は当初、海外で被害の報告事例がある有毒物質やアレルギー反応に関する他の原因物質を探っているうちに時間が経過。結局3月22日になって急きょ公表した。 原因究明ができないまま、使用停止を呼びかけるという最悪の事態になった。紅麹原料を供給していた飲料や食品メーカーなど取引企業への連絡も遅れた。小林製薬の小林章浩社長は3月29日の記者会見の冒頭「今回の件が深刻な社会問題になったことに対し深くおわび申し上げる」と述べ、公表が遅れたことを22日の会見に続いて再び謝罪した。紅麹を食品原料として直接供給を受けたのは50社を超え、この原料を使った製品を扱う企業は170社以上という。
情報提供、公開の徹底を
全国の多くの医療施設には問題の紅麹を使った製品を摂取している人だけでなく、他の健康サプリを広く、多く摂取している人からも問い合わせがあるという。健康被害が強く疑われている腎疾患は症状がかなり進行しないと自覚症状が出ない。「沈黙の臓器」と言われる腎臓に自覚症状が出た時はかなり深刻な状態と言える。 腎臓の専門医などが加入する日本腎臓学会(南学正臣理事長)は、会員医師に向けて「紅麹成分配合のサプリメントを摂取した人から急性腎障害等の腎障害を含む健康被害が相次いで報告されている」として診療現場で該当する患者が受診する可能性があるとホームページで注意を喚起したほか、会員医師に健康被害が起きた患者の情報提供を求めている。 蒸した米にカビの仲間の紅麹菌を繁殖させてつくられる紅麹は古くから食品の着色料などに使われてきた。紅麹そのものが「悪さ」をするわけではない。今回、製品管理に厳格なはずの製薬会社が機能性能性表示食品で初めての健康被害を出してしまった。