紅麹サプリの健康被害拡大 小林製薬と政府、対応に追われる 不安払しょくへ機能性食品を緊急総点検
急がれる機能性表示食品の安全確認
消費者庁によると、特定保健用食品(トクホ)は健康の維持に役立つことを科学的根拠に基づいて国が認可する。「コレステロールの吸収を抑える」といった明確な効果表示が許可されている。これに対し、機能性表示食品は、企業などが食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などを国に届け出れば「お腹の調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」などと企業の責任で機能性を表示できる。「機能性表示食品制度」の下で販売されるが、トクホとは異なり安全性と機能性を巡る国の審査は行われず、必要とされる要件も緩い。 機能性表示食品制度は当時の安倍晋三政権が「経済成長戦略」の一環として2015年4月に始めた。トクホは許可を得るために製品を人間が摂取した試験が必要だが、同食品はこうした試験は不要だ。大幅に規制が緩和された制度に基づく商品と言える。このため同食品の市場は年々拡大し、消費者庁によると現在届け出件数は約7000件、民間の調査では市場規模は7000億円とも言われる。 その一方で安全の確認は企業任せで、 市場に不適切な商品が出回っても国の監視は事実上「事後チェック」になる。また商品や広告の表示もトクホとの違いが不明瞭なケースが多い。今回問題になっている小林製薬の商品も「悪玉コレステロールを下げる。L/H比を下げる」と具体的な効能を示す表示が記載されていた。 自見英子消費者相は3月26日の記者会見で「機能性表示食品に対する疑念を抱かせており深刻だ」と翌日の林官房長官と同じ認識を示した上で「(処方が明確な)医薬品と異なり、過剰摂取の恐れもある。それだけに被害が急速に拡大する」「機能性表示食品制度全体を検討する必要がある」と述べている。
問われる製薬企業の対応
厚労省や消費者庁によると、小林製薬が自社の紅麹関連商品との関連が疑われる被害事案の発生把握から使用停止呼びかけに2カ月超を要した。同社や厚労省によると、同社が医師からの通報で健康被害の可能性を知ったのは1月15日。2月上旬には腎疾患の症例を複数把握していたという。自見消費者相も会見で「小林製薬は1月に情報を入手しながら(関係省庁への)報告まで2カ月も経過し、同社からの報告は同社の会見の直前だった」と遺憾の意を表明している。