過去最多の34万人に達した不登校児の居場所は?「学び直し」など自分に合った多様な学びが可能な「草潤中学校」のユニークな授業・校舎に多くのヒントが!
まずは学校を安心していられる場所に
東海地区初の公立の不登校特例校(現 学びの多様化学校)として開校した岐阜市立草潤中学校。不登校だった子どもたちは草潤中でどのように過ごし、学んでいるのでしょうか。前編(★関連記事参照)ではコンセプトを紹介、後編では校内の工夫やユニークな授業について鷲見(すみ)佐知校長に伺いました。 【画像8枚】ソファのある部屋や人気の電動ろくろなど、「草潤中学校」のユニークな校内の様子を写真でチェック ――先生が子どもたちとの関わりで気をつけているのはどんなことですか? 鷲見校長:不登校だった子どもたちは疲弊した状態で入学してくることが多いです。ですから、まずは何かやるということより前に、ここで安心してゆっくり過ごすせるようにしてあげたいと思っています。校内に子どもたちがほっとできるようなスペースというのもいくつか用意してあるのですが、それよりも、自分のことを理解して、「大丈夫だよ」「ここにいてもいいよ」って言ってくれる先生がいるかかどうかということの方が大事だと思っています。 ――安心感がベースになっているんですね。 鷲見校長:安心感はキーワードですね。そして、安心できるようになると、勉強しようかな、遊びたいなというように子どもたちに少しずつやりたいことが出てくるんです。そして仲間が欲しくなるんです。一般の学校のように「みんなで同じ目標に向かっていこう!」という感じではなく、同じ趣味のアニメが好きだとか、同じゲームをやってるねと言いながら繋がっていく。 いつも子どもたちの中に芽生えた気持ちを満たしてあげられる体制を作っていきたいと思っています。 草潤中学校には、まだまだ休息が必要な子から、授業に出たり出なかったりの子、少しずつ色々なことに挑戦できるようになった子、一般の学校の元気な子と変わらない子までさまざまな子がいます。ですから、それぞれの子の手に届くような学びをちゃんと用意してあげあげられることが、まさに 学びの多様化だと思っています。
「振り返り」や「学び直し」を通して、個別の学びが可能
――一般の中学校とは異なる授業もありますね 鷲見校長:音楽、美術、技術家庭科は「セルフデザイン」という科目で週に1度、2時間枠を取っています。それぞれの教科の最初の5時間を受けた後は、子ども自身が好きな科目を選んで授業を受けることができます。例えば音楽の授業ばかりでもいいですし、バラバラの科目を受けてもOKです。 あとは「ウォームアップ」と「クールダウン」という時間もあります。これは個別担任とマンツーマンで「今日1日どんなふうに頑張ろうか」とか、「今日1日どうだったか」と確認したり、振り返ったりする時間です。月曜日と金曜日には1週間の見通しや振り返りをする「マナビプラン」という時間も設けています。こういった時間を通して「この授業は出席するけれど、この授業は図書館で休憩しよう」「この時間はオンラインにする」などと自分なりに調整するようなプランを立てています。 また、不登校などによって学べていない期間がある子が多いので、今年度からは学び直しのために「マイスタディ」という授業を始めました。特に英語や数学は1度つまづいてしまうと、なかなか先に進めません。ですから、フローチャートを元に自分がどこからわかっていないのかをチェックして、自分に合った学びを進めています。中学校はもちろん、小学校のドリルも多種多様に用意しています。 基本的には個別で進めていますが、例えば数学の方程式や、理科の濃度の計算など皆がつまづきやすい単元をやってみようという特別講座を開催することもありますし、英語のアニメや映画を皆で見たりすることもあります。