「空中テラス」「絶景ブランコ」…逆転の発想で客を呼ぶ!新時代リゾート
大型ホテルの再建に挑む~「空飛ぶレストラン」が登場
白馬・岩岳から車で15分ほどのところにある小谷村。かつてはこの村もスキー客でにぎわったが、観光客が減り、過疎化も進む一方だ。 その村で和田は今、ある施設の再建に取り組んでいる。1973年開業の「白馬アルプスホテル」。背後にある「白馬乗鞍温泉スキー場」も運営する大型ホテルだ。 210室の客室があるが、夏場の稼働率は30%程度。運営元が和田の実績を聞きつけ、テコ入れを依頼してきた。 「『楽天トラベル』の口コミが一時2点台まで落ちていて、点数が低いところは選ばないですよね」(和田) ホテルは以前、主流だった経営スタイルをいまに引きずっていた。めっきり減った団体客頼みの経営から抜け出せていないのだ。 「課題の一つは団体客が中心のホテルを、どうやって個人のお客さんに来てもらいやすくしていくか」(和田) とはいえ資金が乏しいため、大掛かりな改装は難しい。そこで、知恵と工夫で個人客に刺さる体験づくりに汗を流している。この日はスタッフ総出でDIYをして、飲み放題のラウンジの屋外スペースを改装していた。
一方、スタッフが朝食を手に向かった先はリフト乗り場。リフトに乗って朝食を楽しむ「Breakfast in the sky」(11月30日までの土・日・月曜日に運行)だ。 リフトのスピードを通常の半分程度に抑え、20分ほどの朝食タイム。宿泊者なら1人2000円で楽しめる。(※宿泊者以外は4200円) 山好きの客をターゲットに始めた「ご来光ツアー」はコーヒー付きで2000円。ゲレンデではファミリー向けに「羊とのふれあい体験」も。こうした体験企画を次々と考え出し、個人客を獲得していこうと努力している。 立て直しを依頼した「白馬アルプスホテル」社長・鷲澤汪さんは和田の手腕を「自分のところだけ良くしようという考えではないんです、あの人は。白馬から小谷村のスキー場一帯を世界へ売り出そうと。そういう発想が私を惹きつけたんです」と、高く評価している。 9月上旬、「白馬アルプスホテル」の冬場の新しい集客プランを形にしようと、和田が動いていた。ヘリコプターで向かったのはホテルから2分ほどの山中。スキー場としての整備が一切されていない場所だ。 計画していたのは「ヘリスキー」。ポイントまでヘリで移動し、手付かずの大自然の中をスキーで滑る。起伏に富んだダイナミックな斜面を滑降できるのが大きな魅力だ。 安全面に配慮してガイドをつけることにした。白馬に客を呼ぶ新たな目玉にできるか。 「隠れた資産を、自分たちでどうにかするのではなくて、外の人の力も借りながら、最終的に白馬エリア全体が『オールシーズン・マウンテンリゾート』になる一助になればいい。それぞれの『点』がつながって『面』としてリゾートが形成されればいいと思います」(和田) ※価格は放送時の金額です。 ~村上龍の編集後記~ 外国語のような会社名だが、日本語だ。「ズク」は「ガッツ」を表す名詞。根性なしのことを「ズクナシ」と言うらしい。それに「チエ(知恵)」が加わった。長野一帯で通用する方言だ。和田さんは、東京出身で開成中学・高校から東大法学部、農林水産省、米デューク大で経営学修士(MBA)を取得、大学時代はアメフトで卒業に5年を必要とした。中高生時代は1シーズンに数回家族でスキーに行った。人生に積極的な人だ。顔つきも肯定感に満ちあふれている。仲間と共に、岩岳をスイスのような山岳リゾートにしようとしている。 <出演者略歴> 和田寛(わだ・ゆたか)1976年、東京都生まれ。2000年、東京大学法学部卒業後、農林水産省に入省。2008年、ベイン・アンド・カンパニー入社。2014年、日本スキー場開発に入社。白馬観光開発に出向、後に社長就任。2022年、ズクトチエ創業。 ※「カンブリア宮殿」より
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