「寿命半分」を掲げた電車、登場30年超で〝再就職〟できる秘訣は? JR東日本209系、置き換え用車両も判明 【鉄道なにコレ!?】第68回
JR東日本がステンレス製通勤用電車209系を静岡県・伊豆半島東部を走る私鉄の伊豆急行に追加譲渡し、伊豆急が現行の2編成、計8両から増備することを関係者が明らかにした。「寿命半分」をコンセプトの一つに掲げた209系が登場から30年を超えても〝再就職〟できる秘訣には、今も色あせない強みがある。転出する千葉県・房総地区の209系の後釜として、首都圏で広く活躍する電車を転属させる計画を立てたことも分かった。(共同通信=大塚圭一郎) 【動画】消えゆく日本の中古電車 インドネシア 部品調達難
【209系】JR東日本が1993年に導入した直流電源のステンレス製通勤用電車。東京都心部を経由して大宮駅(さいたま市)と大船駅(神奈川県鎌倉市)を結ぶ京浜東北線・根岸線などに当初導入され、後に多くが房総地区に移籍した。他に八高線・川越線の八王子(東京)―川越(埼玉県川越市)間などでも一部運用され、伊豆急は209系を譲り受けて改造した車両「3000系」を走らせている。最高時速は110キロ。製造費用は1両当たりの平均で1億円程度だった。 JRグループの前身で、1987年に分割民営化された日本国有鉄道(国鉄)は頑丈に造った車両をできるだけ長く使うことを目指していた。これを転換したのが「重量半分・価格半分・寿命半分」を掲げた209系の設計思想だった。車体を軽量化したことで消費電力量を低減し、一部編成の車内に「この電車は、従来の半分以下の電力で走っています。」のシールを貼って周知した。また、設計を簡素化したことで調達価格を引き下げることに成功した。 ▽「走ルンです」と揶揄
209系は「重量半分・価格半分・寿命半分」のコンセプトを標榜し、バブル崩壊後の1993年から京浜東北線・根岸線に本格導入された。銀色の車体にスカイブルー色の帯のステッカーを貼り付けた外観は目新しかったものの、置き換え対象となった国鉄時代製造の鋼鉄製車両103系に比べて安普請だとの受け止めもあった。 「価格半分」と「寿命半分」の設計思想に対しては車両を粗製濫造して「使い捨て」にするというマイナスイメージを抱かれ、富士フイルムが販売していたフィルム式の使い捨てカメラ「写ルンです」になぞらえて「走ルンです」と揶揄された。 また、209系は鉄道愛好家らでつくる団体「鉄道友の会」が優れた鉄道車両に授与しているブルーリボン賞、ローレル賞のいずれも逃している。少なくともデビュー時の社会的評価は決して高くなかったと言えよう。 ▽「寿命半分」の真意とは しかしながら、重量半分・価格半分・寿命半分のコンセプトが登場した背景を読み解くと、再評価すべき美点が見えてくる。