ドラマ『宙わたる教室』が問いかけるもの。「人間の真価はどう決まるのか」
窪田正孝(36)が主演を務める定時制高校を舞台にしたNHKの連続ドラマ『ドラマ10 宙わたる教室』(火曜午後10時)が話題だ。放送コラムニストの高堀冬彦氏が解説する。 【写真】本日放送の7話では… * * * * * * * ◆人生の機微を感じさせる作品 夕方から授業が始まる定時制高校を舞台にしたNHKの連続ドラマ『ドラマ10 宙わたる教室』(火曜午後10時)の評判がすこぶる良い。ファンの熱の高さは10月に始まった秋ドラマの中でナンバーワンに違いない。 視聴者の年齢まで分かる個人視聴率を見てみると、学園ドラマでありながら、ファン層の中心は大人たちだ。人生の機微を感じさせる作品だからだろう。「教育とは何か」「人間の真価はどう決まるのか」と静かに問い掛けてくる。 主人公は窪田正孝(36)が演じる理科教師・藤竹叶。東京の都立東新宿高校の定時制で2年生を担当している。教師になる前は将来を嘱望された地球惑星科学者だった。著名大の助教だったが、退職し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)からの誘いも断った。 なぜ、定時制の教師になるのか。藤竹はJAXAに勤務するエリート研究者・相澤努(中村蒼)に対し、「やりたい実験があるので」と言うだけで、それ以上は語らなかった。相澤は理解に苦しんだ。
◆さまざまな背景を持つ4人の生徒 生徒で物語の中心人物となるのは4人。まず子供のころから読み書きが大の苦手で、それが基でグレた21歳の青年・柳田岳人(小林虎之介)。次に母親がフィリンピン人で不法滞在だったため、子供時代に学校へ通えなかった40代の越川アンジェラ(ガウ)。 もちろん10代の生徒もいる。起立時にめまいなどが起こる起立性調節障害であるため、保健室登校を続けている名取佳純(伊東蒼)。最年長は生家が貧しかったことから中学を出てすぐ集団就職した70代の元町工場経営者・長嶺省造(イッセー尾形)である。 藤竹の勧めによって4人は科学部のメンバーとなり、火星のクレーターの再現実験を始める。独創的な実験だった。ドラマ特有のご都合主義と思われる人がいるかも知れないが、この作品は実話がモチーフ。原作は東京大学大学院博士課程で地球惑星科学を学んだ作家・伊与原新氏(52)による同名小説である。