ドラマ『宙わたる教室』が問いかけるもの。「人間の真価はどう決まるのか」
◆差別、不登校 第2回。校内で全日制の女子生徒から暴行だと訴えられたアンジェラは責任を取って自主退学しようとする。藤竹はそれを許さず、「投げ出す口実にしていませんか」と厳しい口調で言う。 アンジェラは全日制女子生徒から盗みの濡れ衣を着せられた上、酷い侮辱を受けたクラスメートの池本マリ(山崎七海)が、カッターで相手を傷つけるのを防ごうとした。やむなく全日制女子生徒に覆い被さったのである。アンジェラは過去に差別を受けたが、その分、他人にやさしかった。 一方で小中学校に満足に通えなかったため、学業に苦戦。これを機に退学しようと考えていた。それを藤竹は見抜いたのである。 第3回の藤竹は保健室登校を続けていた佳純を科学部に入部させる。藤竹は佳純のメモ書きから天文学に興味があることを見抜いていた。 佳純は家庭で母親・佳乃(宮下今日子)の愛に恵まれず、いつも暗い顔をしていた。しかし、藤竹から科学部の実験経過の記録を任せられると、溌剌と取り組むようになる。表情が変わった。アンジェラが温かく接したことも佳純を明るくした。藤竹は全て読み通していたのだ。
◆教育とは何か 第4回では長嶺のクラス内での孤立が問題となる。大半の生徒の間には大きな年齢差がある長嶺はつい「最近の若いもんは」と説教をしてしまうのだ。 その上、長嶺は度を超して勉強熱心だった。「先生、もう1回言ってください」。頻繁に授業を止めた。若い生徒たちはうんざりしていた。 対立に終止符を打てたのは長嶺が授業内で講演を行ったから。藤竹の勧めだった。長嶺は貧しくて高校に行けず、その悔しさをバネにして懸命に働き、会社を興したことを話す。 本当に定時制に入りたかったのはやはり貧困から中卒で働き、今は闘病中の妻・江美子(朝加真由美)であることも明かした。長嶺が異様なまでに勉強熱心なのは病床の江美子に授業内容を完璧に伝えるためだった。 当初は長嶺の話を渋々聞いていた若い生徒たちの顔つきは徐々に神妙になる。世代間格差を埋めるためにはお互いに相手のことを知るしかない。 藤竹はこうなることも見通していた。藤竹は長嶺に黙って江美子の見舞いに行っていたのだ。長嶺の孤立を解消するためだったのは言うまでもない。 教育とは何か。誰でも1度は考えることではないか。生徒の偏差値を上げ、世間に名の知られた高校や大学に入れることも大切かも知れない。だが、それだけが教育なのだろうか。