映画『きみの色』山田尚子監督×はくいきしろい対談。嫉妬し合うふたりが語る、色と光の表現
「祈り」や厳かなものの気配に触れてみたい
はくいきしろい 最近は、光を透過するとプリズム現象でいろんな表現になる感光フィルムのようなものと出会ったので、教会などにあるステンドガラスのような表現も目指しているところです。『きみの色』でも「祈り」がひとつのテーマになっていましたよね。自分も表面的ではありますが厳かな雰囲気だったり、規律や祈りといったものをずっと表現したいと思っていました。『きみの色』ではなぜああいうテーマになったんですか? 山田 私も無宗教だし、宗教について詳しいわけではないのですが、「信じる心」のようなものを勉強してみたかったというのがひとつです。あとは、さきほどもおっしゃっていた厳かなものやその気配が、言葉にはできないけど自分自身にくるところがあって。やっぱり宗教を扱うのは怖かったですし、宗教映画を作りたいというわけでもなかったのですが、そういった気配に少し触れてみたかったというのが大きいです。 ――今回の作品では主人公たちが言葉にならない思いを音に託して人に届けようとしますが、そういった創作活動もどこか祈りのような行為として描かれているのかなとも感じました。はくいきしろいさんは、ご自身のXで創作活動が祈りに似ているというようなことを書かれていましたね。 はくいきしろい 私はめちゃくちゃネガティブなところから創作意欲に発展してしまって、ずっと「救われたい」と思いながら作っているんですよね。だから結局自分に向けた創作活動なんですけど、その作品を見て人が良いと思ってくれて、何か良い影響が現れるんだったら、それに越したことはないな、という感覚で制作しています。 山田 でも実際、京都の片隅で私は救われていました。 はくいきしろい ありがとうございます。
Minami Goto