映画『きみの色』山田尚子監督×はくいきしろい対談。嫉妬し合うふたりが語る、色と光の表現
――監督はこの作品をご覧になっていかがですか?
山田 はくいきさんの作品の実物を今日初めて見ることができて感激しています。「こういう感じだったんか、君。初めまして」っていう気持ちです。とてもパワフルですね。目が離せない。あと意外と大きいことにびっくりしました。素材は何でできているんですか? はくいきしろい アクリル絵の具です。アクリルとメディウムしか使っていないです。 ――色の表現はどのようにして作り出しているのでしょうか? はくいきしろい 基本的にはやはり三原色ですね。そこに暗い部分や白い部分、プラチナ的な要素やパール的な要素、ホログラムの要素などを入れて多層的に見せていく、というのがヴィジュアル的な構想です。 ――はくいきしろいさんは、インターネット上のイメージから作品のインスピレーションを受けて制作されているそうですね。 はくいきしろい もともとは10年ほど前にTumblrにすごくハマっていて。いろんな人をフォローしたらかっこいい写真や色が洪水のように出てきて、もう自分で絵を描かなくて良いじゃん、ってなったんです。それで何年も画像を集めていって、そこで集まった色のイメージやモチーフ、レンズの距離感など画面構成を抽象化して、いまの感覚にアウトプットしています。画像の持つ情報量というものが作品の影響になっていますね。 ――「水金地火木土天アーメン」は山田監督が作詞された楽曲ですが、CDジャケットでも、3人のキャラクターがそれぞれ極限まで抽象化されて、その内面が弾けて重なり合っているような印象を受けました。 はくいきしろい まさにそのようなイメージです。ジャケットに関しては、作家として制作を依頼していただいたとはいえ、作品から外れすぎるのも変だなと思ったこともあり、映画のメインヴィジュアルから抽象化して画面を作っていきました。 山田 こちらもパワフルですよね。私ははくいきしろいさんの作品の入り口が儚い印象だったんです。本当に淡いところで光のいろんな色を見せていかれる印象だったのですが、こうやって現物を見るとすごくガツッとくるんだなって。なのに安らぐんですよね。