「光る君へ」を手がけた脚本家・大石静に独占ロングインタビュー!
書き上げた連続ドラマは数十本以上。脚本家・大石静が描く物語は多くの人々の琴線に触れた。大河ドラマ「光る君へ」を書き終えた大石静にロングインタビューを決行。脚本家とは、その信念とは、そして、人生観について話を聞いた。 「大石静さんに話を聞きたい」 企画を立てたのは2023年夏のことだ。とはいえ、大河ドラマ「光る君へ」を執筆中、多忙を極めた脚本家のスケジュール調整は難航。それでもいま、日本で多くのドラマを紡ぎ出している脚本家に会いたいという想いが消えることはなかった。時は過ぎ、24年11月某日。念願叶って、彼女にインタビューを受けてもらう機会ができたのだ。大作を書き終えて、どこかすっきりとした面持ち。インタビューをした数時間は、まるで一本のスペシャルドラマを鑑賞しているような気分だった。
登場人物たちを立体的に魅せていく。
「脚本家は裏方のひとりだと思っています。台本は台の本、脚本は脚の本。土台がしっかりしていなければしっかりした家は建たず、脚がしっかりしていなければ人の身体はふらふらです。そういう意味で、作品の目指すところを示し、哲学を示すことが私の仕事です」 1986年のテレビドラマ脚本家デビュー以降、現在まで大石静は書き続ける生活を送っている。ドラマ放送が盛んだった90年代には、年間で2クールもの作品を担当していたことを考えると、手がけた作品は枚挙に暇がない。ラブストーリー執筆のイメージが強いものの、実際は医療もの、仕事もの、家族ドラマ、事件ものなど、オールジャンルの人だ。 「ドラマを作る時に大切だと思うのは、登場人物を立体的に見せること。人間は誰しもが天使と悪魔の心を持ち合わせています。その両面に光を当てて、人物を立体的に描きたいと私は思っています。だから現代劇であろうと時代劇であろうと、人間を描くという意味では大差ありません。書きたい特定のジャンルもありません。求められるものにこたえていく、という感じですね」 とはいえ、エンタメ業界とは背筋が凍るほどの群雄割拠の世界。求められたいと望んでも、そう簡単に叶うものではない。ではなぜ、彼女は長きにわたって業界から求められるのか。 「秘訣はないですよ。おもしろいものが書けるかどうかだけでしょう。腰が低いとか、締め切りを守るので使いやすいとかもあるかもですが。それにドラマは私だけで着想するものではなく、プロデューサーや監督、スタッフと一緒に考えるものです。たとえば『星降る夜に』(23年)は、担当プロデューサーが学生の頃参加していた手話サークルの経験が作品の着想点です。手話を主語とする人たちが、とても生き生きとしていて、それを形にしようと思ったそうです。それならその思いにこたえようと、プロデューサーについていきました。私たちは俳優と同じで、現場に呼んでもらわなければ仕事ができません。誰かに『大石さん、大河ドラマが終わったら私とやって』『その次はどうなってる?』と言ってもらえるように、おもしろいものを出すよう頑張っています」