「光る君へ」を手がけた脚本家・大石静に独占ロングインタビュー!
脚本家人生で、大河ドラマを2度執筆。
大石は06年に「功名が辻」の脚本を担当した経験もある。今回は人生2作目の大河作品だ。 「両作、何が違うかといえば基礎知識が違います。『功名が辻』は舞台が戦国時代。織田信長は桶狭間の戦いで勝利し、本能寺で死ぬ。関ヶ原の戦いでは徳川家康が勝利するということは、一般常識として皆知っています。でも平安時代といわれると『道長って偉い人?』程度の知識しかなかったので、勉強が大変でした。まさにゼロからのスタートです。見せ場も違いました。『功名が辻』は、戦とその調略、駆け引きが見せたいところ。戦にいたる経過を見せていくんですね。でも『光る君へ』では、戦はありません。物語の8割は内裏の中の静かなる人間関係であり権力闘争です。それとプリミティブな男女関係ですね。誰も描いたことのない世界ですから、視聴者にどのように受け止められるかは想像がつきませんでした。まひろと道長のカップルが、相性のよい芝居で本当に切なく美しく、そちらも話題になって引っ張ってくれましたけど、大半は内裏の男社会を描いているんです」 いちかばちかの企画で、ハラハラドキドキの3年半を過ごした大石だが、書き終えたいまは「寂しい」とひと言。 「スタッフやキャストと、こんなにも別れがたい気持ちになった作品は初めてでした。主役ふたりの人柄がとてもよかったから、ピリピリとした雰囲気のない穏やかな現場でした。クランクアップの日はセットのバラシがあるのに誰もスタジオから出て行かなくて。みんなで別れを惜しみました。柄本さん、役作りですごく痩せていたんですよ。撮影当日、朝からジムとサウナに行って4キロも落としたそうです。ボクサーみたいですよね。脱水症状で苦しそうだったけど、死ぬ時もしみじみ色っぽかったです(笑)。生涯、道長を求め続けたまひろの気持ちも、道長を看取るまひろのまなざしにあふれていて感動的でした」 大石の「光る君へ」愛もあふれんばかり。 「吉高さんは主役ですけど、実は台詞も出番も少なかったのです。それでも、知的であるがゆえに気難しいまひろの心の奥底を見事に表現し、主役としての存在感を示しました。本当に吉高由里子がまひろでよかったと、心から思います。『光る君へ』チームのスタッフのプロフェッショナルな仕事も素晴らしかったです。セット、衣装、照明、カメラ、その他諸々、どれをとっても気合あふれる仕事ぶりで、私の執筆の励みにもなりました。ドラマはチームワークあってこそですから」