きついノルマ、経費は自己負担――大量採用・大量脱落「生保レディ」の労働実態 #昭和98年
実は、生保営業職員のターンオーバーは、1960年代後半から国会でも再三問題視されてきた。しかし、同じような質疑が繰り返され、半世紀以上を経た現在も解決への道筋は描けていない。 最近では2022年3月の衆議院財務金融委員会で、日本共産党の田村貴昭議員が「営業職員を大量に採用して、ノルマやパワハラ、給料の査定落ちなどで業績の悪い社員を退職に追いやる営業形態は、働き方改革の面から見ても改善すべき悪癖ではないか」と追及した。これに対し、鈴木俊一財務・金融担当相は具体策を示さず、「金融庁としてターンオーバー改善に向けた(業界の)取り組みを後押ししていく」と答えただけだ。
後田さんは言う。 「例えば、『終身雇用を前提とした雇用に変える』などの結論を決めておけば、生保側も厳選採用して人材の質を高めるなど、今と真逆の取り組みをせざるを得ないはずです。しかし、そのような動きをしている生保はありません」 では、パワハラや厳しいノルマなどに悩む営業職員は、どうすればいいのか。 1人でも加入できる「よこはまシティユニオン」(横浜市)の書記次長・川本浩之さんは「生保の営業職員は『名ばかり労働者』で、ノルマを達成できなければ解雇されてしまうことが諸悪の根源です」と話す。
川本さんが指摘するのは、ターンオーバーでは人材が定着しないという構造上の問題だ。 「営業職員の入れ替わりが激しい職場では、同僚が団結するのが必然的に難しくなり、個人の問題として片付けられてしまう恐れがあります。労働問題に直面したら、早めに、かつ、諦めないで地域の労働組合に相談してほしい」 --- 鳥海ケイタ(とりうみ・けいた)ジャーナリスト。東京都出身。権力や強い力によって埋もれてしまう、人々の「声なき声」を届けることをモットーにしている。 --- 「#昭和98年」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。仮に昭和が続いていれば、今年で昭和98年。令和になり5年が経ちますが、文化や価値観など現在にも「昭和」「平成」の面影は残っているのではないでしょうか。3つの元号を通して見える違いや残していきたい伝統を振り返り、「今」に活かしたい教訓や、楽しめる情報を発信します。