スポーツ界の課題と向き合い、世界一を目指すヴォレアス北海道。「試合会場でジャンクフードを食べるのは不健全」
2016年に旭川初のプロスポーツチームとして創設されたヴォレアス北海道は、2023年4月に最速でのトップリーグ昇格を果たし、10月に始まるSVリーグに臨む。代表の池田憲士郎氏は、北海道の自然の恵みを生かした食ビジネスと環境ビジネスに力を入れ、競技と事業の両輪でクラブを発展させてきた。肉体を酷使するアスリートが直面するリスクと向き合い、北海道の一次産業の強みを生かしつつ、スポーツツーリズムへの可能性にも言及。大河正明チェアマンも「一番スポーツビジネスに一家言ある人」と高く評する池田氏のスポーツ界への提言と取り組みとは? (インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=ヴォレアス北海道)
北海道の一次産業と競技をつなぐ意義
――ヴォレアス北海道は事業面で、「健康的な食文化の啓蒙」に力を入れているそうですが、どのような取り組みをしているのですか? 池田:これからの時代の幸せの定義を考えるときに「健康であること」は本当に大事だと思いますし、それには食がすごく関わってきます。北海道といえば「ご飯がおいしい」とか、「安心安全な食材」というイメージがあると思いますが、粗悪な野菜も出回っています。もちろん、一生懸命にその道を追求されている方もいるので、私自身、医学的な論文も含めて読み漁り、「安全な食」のロジックについて学んできました。 アスリートって、極論ですが、実は短命なんですよ。あれだけ体を酷使して、大量のカロリーと大量のタンパク質を摂り、それを分解する過程で体に負荷をかけ、過剰な有酸素運動で体を酸化させながら、燃費の悪いことをするわけです。それを続けると、競技をやめた後に糖尿病になったり、血管や脳の障害につながるリスクもあって、単的に言うと短命になってしまうんです。「スポーツをやりましょう」と啓蒙し、憧れられる存在のアスリートが短命というのは夢がないじゃないですか。 ――肉体を酷使するトップアスリートは、それだけのリスクも負っているわけですね。 池田:そうです。それに、試合会場で憧れのアスリートを応援しながら、子どもたちがジャンクフードを食べているのも不健全だと思います。スポンサーさんの関係でクラブが口を出せない場合もありますが、一つぐらいそこに正直に向き合うクラブがあってもいいと思い、それが北海道の一次産業の可能性につながればと思いながら取り組んできました。 ――化石燃料削減につながる製品も扱っているそうですが、環境ビジネスもスポーツチームとしては珍しい取り組みですよね。 池田:そうですね。食の取り組みや環境問題の重要性に関しては、特にコロナ禍で重要だと感じました。当時は「エンタメなんていらない」という風潮になったじゃないですか。私たちのようなスポーツのエンタメは、個人の健康的な生活や安定した環境があって初めて必要とされるわけですから、環境を壊したり、健康を害したりすることに加担していたら、長期的な目で見て自分たちの首を縛ることになる。だからこそ、その課題と向き合わなければいけないと思いました。 オープンに情報を届けられることはスポーツチームの特性で、行政や一企業のアカウントよりもメッセージを届けやすい。だからこそ、率先して環境問題や食の健康も含めて支援していくことこそが我々の役割だと考えています。環境問題の取り組みは企業さんにとってもいいことなので、いいことを正直にやりましょう、と。