軍政権の弾圧を生き抜くミャンマー医療者、来日した著名医師が日本の市民に訴えたこと
軍事クーデターから3年10カ月が経過したミャンマー。国軍と民主派勢力との闘い、今年2月から始まった徴兵制など、終局の見えない混迷が続く中、多くの人たちが祖国を離れた。一方でミャンマー国内では300万人以上の避難民が発生している。 ミャンマーの現状を伝えるべく、京都・同志社大学で2024年11月14日、ミャンマーとタイの国境地帯でミャンマーからの避難民への支援に従事している人たちが講演した。 タイ北西部のメーソットで35年にわたってミャンマー避難民の無償医療支援に携わり、2002年にアジアのノーベル賞ともいわれるマグサイサイ賞を受賞したシンシアマウン氏をはじめ、最前線で活動するミャンマーの人たちの話に多くの参加者が耳を傾けた。 【写真】ミャンマー国軍の爆撃にさらされるチン州テイディム
■ミャンマーの医療崩壊と人道支援への取り組み ミャンマー国内ではこれまでに300万人以上の避難民が発生している。医療問題も一段と深刻になっている。 「クーデター後、ミャンマー軍の暴挙に最も反発したのが医療従事者たちでした。彼らは『市民不服従運動』(CDM)などさまざまな形で軍に対して反対の意思を示しました。そのため、彼らは軍の標的にさらされました」 国境の医療の最前線を担うビルマ医療協会のティータースエ氏 はこう話した。
「現在のミャンマー軍事政権は医療従事者を不当に解雇したり、逮捕・監禁するなど迫害をしてきました。そして病院などの医療施設もこれまでに300以上が破壊され、そこで働いていた人たちも今、国境に逃れてきています」 そうしたことから、現在、ミャンマー国内では医療者が非常に少ない。加えて軍事政権は民主派勢力が支配するエリアへの医療供給や物資を制限・妨害している。そのため、特にカレン州など戦闘が続いている地域では医療を受けられる人が極端に減っている。
こうした状況を打開するために、タイ国境に逃れ、難民となった医療者やボランティア、そしてミャンマー国内に残る人たちが連帯して「バックパック医療団」を結成している。 医療過疎地に住む現地の有志の人たちが、タイ北西部のメーソットにあるシンシアマウン氏が運営するメータオ・クリニックをはじめさまざまな場所で一定の医療訓練を受け、地元に戻って簡単な医療を行うというのがこの医療団の取り組みだ。1995年発足当時はメータオ・クリニックが運営していたが、現在は独立組織として活動している。