軍政権の弾圧を生き抜くミャンマー医療者、来日した著名医師が日本の市民に訴えたこと
加えて学校の教材費や教員たちの給料も払わなければならないが、 親たちの中には学費を払えない人もいる。国際的な支援や個人の寄付で賄っているため、運営状態はどこもギリギリだという。 その話を聞いていて、私はタイの移民学校で聞いた話を思い出した。 私は2024年1月にタイとミャンマーの国境地帯で取材した。その時に訪問した学校の校長(56)は、早朝2時間かけて山村に住み歩いてくることができない子どもたちを軽トラックで迎えに行き、そのあと自身の授業をこなし、学校の維持運営・管理などで夜中の12時から2時まで働いていると語った。
「子どもたちの送迎だけでもドライバーを雇ったほうがいいのでは」と尋ねてみたところ、「給料も払えないから、私がやるしかありません」とため息をついた。あまりのオーバーワークに顔色も悪く、ヘトヘトの顔をしてインスタントコーヒーをすすっていたのが印象的だった。 タイのメータオ・クリニックで長年にわたってミャンマーからの避難民の医療に携わるシンシアマウン氏は、同志社大学での講演でクーデター後に変化した避難民たちの状況を説明した。
「ミャンマーから逃れてきている人は、ここ数年と比べても目に見えて増えています。最近では大学教授や医師など専門的スキルを持った人が増えているのが印象的です。国内のCDM運動に関わり、逮捕や拷問など身の危険を感じてのことでしょう」 また、2024年から始まった徴兵制により、18歳~30代の若い人たちもどんどん国境を越えてきている。ミャンマー国内では徴兵をきっかけに軍への贈賄が横行。暴動も頻発し、自殺者も出たという報道もあった。
未来を担う若い人たちを戦争に参加させてまで内戦を続ける道義的意味はいったいどこにあるのか、改めて考えさせられた。 「医療に関しては、避難民の増加に伴って緊急性の高い患者や妊娠女性に対応しなければならないケースが増えています」(シンシアマウン氏) メータオ・クリニック内では対処できないほど大きな負傷や症状の患者もいる。その場合はメーソットにある大きな病院に搬送する。 ■メンタル面での不調を訴える患者が急増