軍政権の弾圧を生き抜くミャンマー医療者、来日した著名医師が日本の市民に訴えたこと
「ミャンマーからの難民が増え始めた頃からこの活動をしてきました。クーデター後、私たちの仕事の重要性はさらに増しています」(ティータースエ氏) 軍事政権による医療従事者への迫害は激しさを増している。国内の医療環境は悪化の一途をたどり、国内避難民は命の危機にさらされている。その中でさらなる打撃となったのが、2024年9月の洪水被害だ。 「私たちが得た情報によるとミャンマーでは100万人以上が洪水による被害を受けました。その多くは国内避難民であり、二重に故郷を追われている状況です」(ティータースエ氏)
■バックパック医療団は避難民の命綱に バックパック医療団は、医療にとどまらず現地の人たちの生活面も支えている。困っている人たちに食料を配り、汚水が氾濫して安全な水がない地域には給水システムを建設した。また、浸水した家屋から高齢者、障害者 、子どもたちを安全な場所に移動させるのも医療団の仕事だった。 「ミャンマーのインフラは整備されているとは言えません。時には患者の元へ向かうのに大きな川を胸まで水につかりながら渡ったり、3~4時間歩かなければならないこともあります。現場の医療者に必要なのは強靭な体力と、コミュニティを守りたいという強い使命感です」
ティータースエ氏はそう強調した。 軍事クーデター以降、混乱したミャンマーを逃れる人たちの多くが目指すのは隣国タイだ。そうした人たちは国境付近にとどまり、避難民キャンプで生活するか、あるいはタイに入国して移民として生活している。タイに避難した人たちの多くは正規の滞在資格を持っておらず、州をまたいで移動したり国内で安定した職に就くこともできない。 そうしたことから一部の人たちは生活のために、 危険な不法行為に手を染めてしまう。
「特に若い人たちが売春や違法労働をして、危険な目に遭う例が多く発生しています。私たちは彼らが目標を失わず自ら考え正しい道を選び取れるようにサポートする活動を行っています」 国境地帯で主に子どもたちや女性に支援をしているスワナミン財団副代表のサンティファップマウンジャムラード氏はそう話す。 ■ミャンマーの子どものために学校を開設 同財団が 特に注力するのが子どもたちの教育だ。 現在、ミャンマーから逃れてきた人たちが学ぶ移民学校はタイ国内に63校、生徒の数は1万5000人以上にのぼる。単純計算で、1つの学校に230人以上が在籍していることになるが、物価が高騰するタイ国内で学校として借りられる敷地はさほど広くない。