海外ではこんな制度はありえない…「主婦年金」の廃止見送りで"3号主婦"本人を待ち受ける残酷な未来
厚生労働省の社会保障審議会年金部会は12月10日、第3号被保険者制度の廃止を年金法改正案に盛り込まない方針を決めた。生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんは「ガッカリしたのは廃止を求めていた経済団体、専業主婦優遇に批判の声を上げていたフルタイムで働く男女だけではない」という――。 【図表をみる】第3号被保険者の働けない理由 ■5年後の実現を目指す 経済同友会など経済団体を中心に主婦年金の廃止を求める声が高まっていましたが、厚生労働省は来年の通常国会で話し合われる年金法改正案には盛り込まない方針を固めました。5年後の実現を「目指す」ということです。「目指す」とあり、5年後に実現が確実という意味でもありません。 現在、日本では103万円の所得税の壁や130万円の社会保険料発生の壁などを見直し、働き控えをなくす議論が進んでいます。 それは、女性のキャリアアップにもつながることです。内閣府「男女共同参画白書 令和6年版」によると、2024年の共働き世帯は約75%と増加してきています。女性の昇進も増え、今後ますます活躍が期待されるからこそ壁の撤廃、第3号被保険者制度の廃止が議論されていたのです。 ところが、これが延期されるとなると、これを阻害することにもなりかねません。 主婦年金と呼ばれている第3号被保険者制度は、会社員や公務員の配偶者に扶養されている人が対象です。国民年金に加入しますが、保険料の負担なく、年金を受け取ることができます。年金給付のために必要な財源は厚生年金や共済年金であり、会社員や公務員全員の負担によって支えられています。それが不公平という声が上がっているのです。 出産や育児のためにどうしても働けない人、夫が高所得で自ら働く必要性がない人などが混在していて、一部の働けない人への配慮のために、得をし続ける、優遇されすぎる人が出ているのです。 ■諸外国ではありえない制度 多くの諸外国では所得のある人だけが年金に加入するのが一般的で、日本のように、国民年金に加入が義務化されているということがありません。 そのうえで、厚労省「第3者被保険者制度2024」によると、加入者が保険料を納付した期間とみなすことで給付を保障する例としては、ドイツ、英国、フランス、スウェーデンなどの欧州の国があります。 例えば、未婚の母や離婚も多い英国では、税制や年金制度を個人単位で考えられており、妻またはシングルマザーが出産・育児期間に無収入、低所得の場合、保険料の納付期間とみなされ支給年金額に反映されます。 日本と違うのは、夫が会社員や公務員の場合だけ優遇されることはなく、何の職業に就いていても妻の年金の扱いは同じということです。そのため不平等であるという異論はありません。 ※編集部註:初出時、欧米の年金制度について誤解を招く記述がありましたので訂正しました(12月18日17:30追記)