海外ではこんな制度はありえない…「主婦年金」の廃止見送りで"3号主婦"本人を待ち受ける残酷な未来
■3号の配偶者のほうが高年収なのに優遇される不公平 実は、共働き正社員夫婦と比較すると、第3号被保険者の夫のほうが所得が高い傾向がわかっています。夫の所得が1000万円以上の割合は、雇用保険の妻では約5%にとどまるのに対して、第3号被保険者の夫は10%を超えています。結果、所得が高い世帯の妻が優遇されるという現象もみられます。 国民年金への加入は全国民の義務ですが、毎月1万6980円の負担は大きく、2割近くが未納です。厚生年金より受給額も少なく、しかも、50%ずつ会社と折半で払い込んでいる厚生年金と異なり、100%自分で払わなければなりません。自営業など国民年金の加入者の中には、生活費を工面して一生懸命真面目に払い込んでいる人も多数います。彼らは自分の配偶者の分も支払っています。ところが第3号被保険者は、国民年金の保険料を自分で毎月払わなくても保険料納付期間として将来の年金額に反映されるのです。 ■パート主婦も3号年金に反対 この第3号被保険者が優遇されていることへの批判は、人材不足に悩む企業や国民年金加入者、働く男女だけでなく、実は3号に留まることにこだわるパート主婦本人からも出ています。 「主婦年金のため130万円未満しか働かないようにしている」というのは小学校低学年の子ども2人がいる大川ひとみさん(37歳・仮名)です。130万円を超えると扶養を外れ、年金、健康保険料(月収の15%)を払わなければならなくなります。これにより出産手当金や傷病手当金が出ますが、もう出産することもないでしょうし、ケガした場合も自分で民間の損害保険に加入していますので、目先の手取り金額を増やすことのほうが大事と付け加えます。 一方で第3号被保険者制度(主婦年金)の廃止が見送られたことで、短時間正社員など女性が活躍しやすい勤務形態の募集が増えなくなるのではと心配しています。 大川さんはメーカーに正社員で入社、部長の優秀な秘書として注目され、やりがいを感じはじめていた時期に出産しました。育休から復帰後、しばらく働いていたのですが、急な仕事が多い部長の依頼やスケジュール管理でミスが増えて、出産前のように仕事をこなすことができなくなりました。 同じ部署に結婚・出産した女性社員はいません。時短勤務の制度はあるものの、残業免除を快く思わない女性や男性上司が多く、協力体制もなく、やむなく仕事を辞めることにしました。現在携わっている小売業のパートでは、大事な企画や経営の話には入れてくれないし、やりがいを感じません。たとえ小売業でも短時間正社員を募集する企業が増えれば、秘書業務の経験をいかせることもあるはずです。パート主婦のリーダーにもなれるかもしれません。ちょうど子どもに手がかからなくなってきた今なら、再びキャリアを積めるのではないかと期待していました。そのために資格取得にも前向きに取り組んでいたのです。