海外ではこんな制度はありえない…「主婦年金」の廃止見送りで"3号主婦"本人を待ち受ける残酷な未来
■第3号被保険者が働かない理由 第3号被保険者が働かない理由は「育児」が7割で、「介護」は1割程度、それ以外は病気などです。 子育て中7割のうち、末子が2歳以下は2割以下です。 待機児童が多くて問題になっていた時期もありましたが、今は保育所も増加しており待機児童も減少しています。ベビーシッター利用料にも助成金(1時間2500~3500円)が適用され、行政のホームページから簡単に申請できるようです。 人材不足で、産休や育児休暇、時短制度、在宅ワーク、企業内託児所などを導入したり、短時間正社員を募集する企業もでてきました。2025年度から300人以上の企業は男性の育休取得率の公表が義務化されます。また、同じく2025年度から政府は東証プライム上場企業の女性役員の比率を19%にする目標を掲げています。育児と両立しながら働く環境の整備はかなり改善されているのです。 そのため、大川さんは、さらに企業内での改善が進み、短時間正社員の募集も増えるかと期待してキャリアアップできると考えていました。 ところが、主婦年金の130万円の壁がある限り、夫の扶養から外れて年金を払わないように、働き控えをする主婦がかならず一定数います。今は自分もその一人です。103万円の所得税の壁が上げられて仮に国民民主党の主張する178万円になっても、第3号被保険者制度が廃止されなければ、扶養のまま保険料を払わなくてもいい130万円未満に働き控えをし続けるでしょう。
■企業にとっては3号でとどまってくれるパートは都合がいい 企業側も夫の扶養でおさまってくれれば社会保険料を払わなくてすみます。 今、パート社員の社会保険料の企業負担を5割以上に増やすなどの議論も進んでいます。企業にとってみると年金を含め社会保険料の負担を少しでも減らしたいところです。 いつまでも夫の扶養に入ってくれる第3号被保険者は、パートとしてとても貴重な存在であり、正社員にしようなどと思うはずがありません。 主婦年金のような一見主婦にとって有利な制度が残ることが、大川さんのように数年のブランクを経てキャリアに戻りたい女性にとっては有益ではないのです。 ■“3号主婦”の行きつく先 現在、自営業などの国民保険加入者(第1号被保険者)は1431万人、厚生年金加入者(第2号被保険者)の4535万人と合わせて約6000万人に対して、第3号被保険者は1割弱の763万人います。1985年導入以降、その割合は減少していますが、50代は維持しています。 一人目を出産後、例えば20代、30代で正社員から専業主婦やパートになってしまうと、キャリアが遮断され給与は半分以下になります。数年から10年、自分のキャリアを忘れて育児をすることでスキルを維持できなくなります。その後、転職、正社員登用の機会を逃しているうちに介護要員にされてしまうといった昭和の主婦に後戻りしてしまいます。