2025年の景気は「緩やかな回復が持続」…経済評論家・塚崎公義氏が予想
少子高齢化で景気の波が縮小中
少子高齢化による労働力希少は、「不況だと失業者が増えて、消費が落ち込み、景気がさらに悪化する」という従来の景気循環メカニズムを変える力として働きます。景気が悪くても失業が増えないので消費の落ち込みが限定的となるからです。 それ以上に重要なことは、高齢者の所得は安定しており、したがって高齢者の消費も安定しているということです。高齢者の比率が高まると、消費の振れが小さくなるのです。同時に、高齢者向けの仕事をしている若者の所得も安定するので、二重の意味で安定します。極端な話をすれば、若者が全員で高齢者の介護をしている経済では景気の波が皆無なわけです。 したがって、少子高齢化が進むと、景気の波は小さくなっていきます。そうなると、誰も景気の予想に関心を持たなくなるかもしれません。景気予想屋である筆者としては悲しい限りですが、筆者は定年退職した身なので、打撃は大きくありません。かわいそうなのは、景気予測を仕事にしている現役の後輩たちです。 というわけで、筆者が景気見通しを執筆する機会も減っていくでしょう。そこで、最後に愚痴を記しておきます。 今回起きているのは、景気の波が小さくなるから景気予想屋への需要が減っていく、ということなので、仕方のないことです。しかし、景気予想屋の存在感が大幅に縮小したのは、はるか昔のバブル崩壊後でした。バブル期までは、社会貢献的な意味も込めて景気予想屋を多くやとっている金融機関が少なくありませんでしたが、それらの金融機関に余裕がなくなり、景気予想屋を抱えるコストを削減したのです。 代わりに存在感を増したのが「株価や為替や金利の予想屋」といった「マーケットエコノミスト」です。同じ情報でも、稼げる情報の生産にシフトしたということでしょう。 今後についても、マーケットエコノミストの存在感は大きいままでしょう。景気は変動しなくても株価等々は変動するからです。せいぜい筆者も「老後のたのしみとしての株式投資」のためにマーケットエコノミストの情報を活用することにしましょう。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義