新iPad miniは「見た目以上」のアップデートと値頃感、唯一のプロ向け小型端末に
より高い付加価値と機能を持つ小型端末を求めるユーザにとって唯一の選択肢
デザイン& 建築アプリ「Morfolio」を使うことで、建築家は現場で実際の建物を実寸に合わせてiPad mini上に取り込み、Apple Pencilを使ってさまざまな測定や設計の修正を行える。例えば、既存建築物のリノベーション計画時に、現場で寸法を測りながらリアルタイムで3Dモデルを構築、テクスチャを入れ替えるなどしてクライアントにその場でビジュアルを提示することも可能だ。 航空業界ではアプリ「ForeFright」がパイロットの定番になっている。このアプリは、3D表示のルートマップやリアルタイムの気象情報を提供し、フライトの安全性と効率を大きく向上させる。iPad miniのコンパクトなサイズは、狭いコックピット内で従来の紙の地図や複数の機器の代わりとして最適だ。 iPad miniの高解像度ディスプレイや画質の高さから、患者のベッドサイドでMRI画像やX線写真を見せたり、エコー検査用の携帯型プローブを接続して検査するといった使い方にiPadは使われている。電子カルテでの診療記録の入力や閲覧なども同様だ。 同じことは、移動中や即興的なセッション中など、あらゆる場所で楽曲制作やミキシングなどの創作活動に没頭できるし、映画やアニメーション制作の現場では、ストーリーボードの作成やアニメーションのラフスケッチ、あるいはCGアニメーションの編集を手元のApple Pencil ProとiPad miniで行える。 なお、iPad miniは、これまで一貫して搭載メモリが他のiPadシリーズよりも少なかったが、今回は8ギガバイトまで増強されている。プロフェッショナル向けのアプリケーションを使う上で、このメモリ容量の増加には大きな意味がある。例えば、アニメーション制作ツールやドローイングツールなどで、扱えるレイヤー数や3Dオブジェクトの数が増えるはずだ。 ■「見た目以上」のアップデートと値頃感 円安の進行によって割高間も感じていたiPad miniだが、今回は内蔵ストレージの容量向上もあり、税込7万8800円からという価格は比較的手頃な範囲に収まっている。256GBストレージで比較すると価格は下がっており、前述したように512GBのオプションが用意されたことで用途を広げた。 iPad miniは「小型でありながら妥協のない高性能を実現したプロフェッショナル向けのモバイルデバイス」として独自のポジションを引き続き確保している。 一方で、初代モデルが登場したときのような手軽で、コンパクトなウェブブラウジングツールや電子書籍、ビューアーとしての役割は、副次的には存在するものの、価格に見合うものではなくなってしまったとはいえるだろう。 最もそうしたコンテンツ、ビューワーとしてのタブレット端末は、世の中に低価格な製品が多数存在する。より高い付加価値と機能を持つ小型端末を求めるユーザーにとって唯一の選択肢であるよう、適切なアップデートが行われたと評価したい。
本田雅一