能登半島地震1年:地元拠点の写真家が見つめ続けた被災地の姿
「被災地」の記録から「復興への道のり」の記録へ
石川県は12月17日、能登半島地震による県内の死者が469人に達したと発表。他県や今後の災害関連死の認定などを含め、死者は全体で500人を超える見通しだ。建物の被害は合計10万件近くにのぼっている。 今の能登半島は、復興への道のりに立つ前の「応急処置」の段階にあると感じる。9月の能登豪雨で甚大な被害を受けた地域も多く、この先、まだ多くの困難が待ち受けているだろう。もともと少子高齢化と過疎化が著しく進んでいたところに、今回の地震が追い打ちをかける形となり、人口流出も避けられない現実がある。 「復興」という言葉にどのようなイメージを持つかは、立場や状況によって異なるだろう。それでも、被災地支援に来てくれた多くの人が「能登は必ず復興しますから」と力強く言ってくれたその言葉に、私は大きな希望を見い出している。 雨が降り続く中、被災地を記録していると、一瞬だけ空に晴れ間が見えた。その瞬間、海の方に虹が架かり、倒壊した家屋と空が一つの風景として映し出された。その光景をカメラに収め、今回の記事の冒頭に掲げた。この一枚が未来の能登へ希望をつなぐ写真になることを願う。 月日がたち、被災地の状況が変わっていく中で、写真を撮り続けた私にしか伝えられないことがあるかもしれないと感じ始めた。能登には美しい自然に加えて、古くから受け継がれてきた豊かな文化や伝統がある。それらは単なる「遺産」ではなく、未来へとつながる大切な「財産」だと思っている。そして私たちは、この文化や伝統を決して失うことなく、次の世代へと受け継いでいかなければならない。私は写真家として、それらを担う一部になりたいと思う。 復興への道のりを記録し続けることで、現実と向き合いながら、生業(なりわい)の再建にも努めたい。「再生」には長い時間が必要だが、その未来に少しでも希望の光を灯(とも)せるよう、歩みを止めることなく進むつもりだ。 この記事が、能登半島地震を記憶するきっかけとなり、一人でも多くの人が能登の今とこれからに思いを寄せてくれることを願う。