「チームラボ 幽谷隠田跡」(茨城・五浦)がオープン。棚田跡が作品になった、夜の森のミュージアム
棚田跡が夢幻的な作品空間に
さらに、横を歩く人のペースによって竹林に流れるサウンドが変化する《幽谷の竹林》、10月8日から公開となった、宙を生き物のように素早く動き回る光の痕跡の作品《連続する生命の痕跡》を過ぎて森を通り抜けると、突如開けた場所にたどり着く。棚田跡を作品化した《隠田跡》だ。 段差になっている棚田跡にランプが浮かび、その周囲を囲む木々が様々な色に照らされている。柔らかく光の強さを変えるランプや色を変化させる木々が、呼吸をするように連関し合ってひとつの空間を作り出す。作品から流れる電子音と秋の虫の声も相まって夢幻的な景色が広がり、ウッドデッキに座って眺めていると思わず時間を忘れてしまいそうになる。 《隠田跡》の水中には橋のように道が渡されており、来場者は作品の中に入ってランプのあいだを歩くこともできる。こちらも人の動きに反応して、インタラクティブにランプの光が変化する。 さらに「五浦幽谷隠田跡温泉」の宿泊者はこの作品を臨む露天風呂に入ることが可能。源泉掛け流しの湯に入り、作品世界に身を浸す贅沢な体験を堪能できる。 「チームラボ 幽谷隠田跡」はじっくり作品を見ながら歩くと1時間以上はかかる。夜は暗く、道も平坦でないため、動きやすい格好で行くのがおすすめだ。
チームラボ作品に泊まれるコテージも
また、「チームラボ 幽谷隠田跡」自体は、宿泊しなくても入場できるが、「五浦 幽谷隠田跡温泉」の宿泊施設でもチームラボの作品を見ることができる。 グランピング施設の広大な敷地内には2棟のコテージ、20張のテントがある。コテージの2階に設置されているのが《天地無分別》だ。ベッドの対面に森に向かって開けた三角形の窓があり、窓を囲む床や壁面が鏡面になっている。窓の外に広がる森の景色が鏡に万華鏡のように反射して室内に無限の森が広がり、ベッドルームを特別な作品空間に変えている。 温泉やコテージなど宿泊部分の設計を手がけたチームラボアーキテクツ代表の河田将吾は、これまでのチームラボでの作品でもテーマになっていた、作品に没入するイマーシブな体験を今回も意識したと明かし、「作品の中に入りながら日常の体験を行えるような工夫をしています。美術館で美術を見るといったかたちを飛び超えて、日常にアートが入り込み、そこで少し長い時間を過ごしていただき、朝を迎えて1日を終える。そのような体験ができればいいなと思っています」と述べた。